四十三庵

蔀の雑記帳

「クルーグマン教授の経済入門」ポール・クルーグマン、山形浩生訳

○クソ面白い経済本 クルーグマンの本はずっと読みたい読みたいと思っていたけど、もっと早く読むべきだった。 ホント面白い。 原題、paul krugman"The Age of Diminished Expectations"→「期待逓減の時代」 ちょっと昔のアメリカ経済が話題の中心になっているのにも関わらず、 今の日本人が面白く読めるのは、本当に面白い本だからだろう。 ○賛否両論(主に否)の口語訳 こちこちの学者訳が嫌いというのは、僕も同じなんだけど、この訳はかえって読みづらいと思う。 後、クルーグマン本人の注と、山形さんの注が、どっちがどっちなのかわかりづらい。 一応違うマークが使われてるんだけど、もっとしっかり区別して欲しい。 以下気になった内容を、簡単にまとめる。 ○1部、経済のよしあし ・生産性成長 経済の一番の目標。しかし成長させるのは難しく、一筋縄ではいかない。 ・所得配分 ・雇用と失業 失業率を0にしようとすれば、インフレが起こる。 インフレを加速しない範囲で一番低い失業率のことを、 NAIRU(Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment)と呼ぶ。 なぜ低すぎる失業率は、インフレを加速させるのか。 失業率が0になった場合、全員に職がある状況になる。 消費需要もたくさんうまれるんで、物価は段々上がってくる。 労働者の賃金も上がってくる。 それが5%のインフレをうんだとする。 5%くらいなら我慢できるが、問題は、その次。 労働者が、5%のインフレが続くという期待を持つようになる、つまりインフレ期待を抱くようになると、 賃上げ交渉には、5%のインフレを加味して、それ以上の賃上げを求める。 企業の価格設定も5%のインフレを加味して、それより高い値段設定をする。 このプロセスが繰り返されて、インフレ率はどんどん大きくなる。 これを防ぐには、ある程度の失業率が要る、と。 ○2部、貿易赤字とインフレ ・貿易赤字 貿易赤字はごく短期では失業率を高めるかもしれないが、国内雇用に対してそんなに悪影響はない。 貿易赤字の大きな悪影響は、 ・その政府の債権を海外の国民が持つことになるため、国内の資産が海外に流出すること ・巨大な貿易赤字から、不安になった外国投資家によって、金融危機が起こるかもしれないというリスク 基本的に貿易赤字の原因は貯蓄率の低下である。 国民が貯金しないで、ばんばん使えば、国内に出回ってる商品だけじゃ足らなくなるんで、 海外の商品がばんばん輸入されることとなる。 為替レートや国際競争力は、重要な問題ではあるけれど、 貿易赤字について考える際は、本質的な問題ではない。 貿易赤字の解決法は、輸出促進と輸入制限。 でも単純にやると、海外に流出する自国の貨幣が減るので、為替レートが上がる。 それが輸出に歯止めをかけてしまい、輸入制限の利益を打ち消してしまう。 そこで、輸出促進輸入制限に加えて、国内需要の削減もしなければならない。 よって結論としては、財政赤字を減らして、ドル安にするか輸入制限をかけるかすればよい。 ただ実際、そこまでして貿易赤字を減らす必要もなさそうだ。 ・インフレ インフレ率を下げたければ、失業を増やさなければならない。 ○3、政策問題 ・ヘルスケア(医療) ・連邦準備銀行FRB) ・ドル ・自由貿易保護貿易 保護貿易のコストというのは意外と低い。 ・日本 ○4、ファイナンス ・セービングス&ローン ・ロイズ ・グローバルファイナンス ○5、アメリカの未来 ・楽観論 ・悲観論 ・よくも悪くもならない ○番外編;日本の流動性トラップ ここで読める。 日本は流動性の罠に陥っていて、これ以上の財政支出も意味ないし、利子下げも限界なんだから、 インフレ期待を起こさせるしかない、という主張。 ○感想 しかしこういう本を読んでると、日本経済って思ったよりすごいんだなあと思う。 バブル世代の連中やバブル経験者の政治家が、どう考えても衰退していくだけにしか見えない日本経済を、 「今はダメだけど、そのうち経済成長が復活するよ」なんてアホなこと考えてるのも、 あながち、ただ頭が残念なだけ、ただバブルで脳味噌やられただけ、ということでもないのかも。