四十三庵

蔀の雑記帳

平野啓一郎「日蝕」

平野啓一郎芥川賞受賞作ということで、毀誉褒貶激しいというか、 amazonレビューなんかだとほとんど罵倒しかない。 「ルックスの悪さを茶髪とピアスとブランド物のスーツで誤魔化している著者自身と重なり合う」 なんて、ほぼ悪口じゃねーかと思うんだけど。 僕自身は結構面白く読んだ。 「三島由紀夫の再来」っていうキャッチコピーは、読む前はちょっとげんなりしたけど、 読んでみると、そう言いたくなる気持ちもわかった。 難語使いまくり、抽象的で芸術的な理念、変態性、京大法学部出身(ゆっきーなは東大だけど)、 ってこんだけ材料がそろえば、そりゃ三島由紀夫の再来とも言いたくなるわな。 でも三島由紀夫と比べるのはいくらなんでもかわいそうだと思うんだけど。 ゆっきーなの影響は、強く受けてるんだろうけど、平野啓一郎とゆっきーなは全くの別物。 芥川賞の受賞で、石原慎太郎が「三島の『仮面の告白』には遠く及ばない」なんて抜かしてたけど、 「太陽の季節」と比べたら格段に優れてると思いますよ。都知事。 ちなみに石原慎太郎の選評は、 浅薄なコマーシャリズムがこの作者を三島由紀夫の再来などと呼ばわるのは止めておいた方がいい。三島氏がこの作者と同じ年齢で書いた「仮面の告白」の冒頭の数行からしての、あの強烈な官能的予感はこの作品が決して備えぬものでしかない。 って言う、相変わらずの言語障害っぷりを発揮しててからの、 人のことを衒学呼ばわりする前にちゃんと勉強しなさいという話でしかない。 (あらすじ) 中世ヨーロッパのパリ大学神学部を卒業した主人公は、『ヘルメス全集』の続きを探すために旅に出る。旅先の街で彼が見たものは、荒廃した農村、堕落した僧侶、そして一人の錬金術師であった。 錬金術師との交流が深まる中で、主人公は彼が両性具有の得体の知れぬ人間と会うのを目撃する。 魔女狩りによって、両性具有の人間は焼き殺されることになる。 そこで主人公の見たものは。 (感想) 文章は、こういう風に書こうとは思わないけど、まぁまぁ好きな文体かなあ。 人によっては読みづらいかもしれないし、僕ももうちょっと長い小説だと辛いかも。 物語も存外ストーリー性があって、面白い。 (パクリ疑惑があるけど、そっちは読んでないから知らん) 酒と色に耽る僧侶の描写とか、両性具有者に対する拷問の描写とか、 何より「日蝕」の描写とか、筆力は十分にあると思うんだけど、 文学評論家みたいな人々があんまり誉めすぎるから、 かえって正当に評価されなくなってしまった観がある。 「日蝕」のシーンは好きだなあ。変態的かつ圧倒的。 中空では太陽と月が、地上では巨人の男女が絡み合い、 目の前では両性具有の精液が女性器を浸している。 ここで主人公が、「両性具有者は私なのだ」とか言い出して、 「光に包まれる」訳なんだが、これはいかにも安易な、 「読者の理解を超えようと」とした描写で、あんまりいいとは思わない。