四十三庵

蔀の雑記帳

ポール・クルーグマン「良い経済学 悪い経済学」訳;山岡洋一

またポルクル。 原題"POP INTERNATIPONALISM" 「デタラメ大統領」のコラム調の読みやすさになれてしまうと、 こういうかっちり書かれた内容が読みづらく感じる。 テーマは主に貿易について。 アジア通貨危機を予言して、クルーグマンの名声を一躍高めた、「アジアの奇跡という幻想」も収録。 (ぶっちゃけ予言なんかしてないけど。 ただ「アジアの生産性はそんな高くないんで、成長ペースはそのうち鈍化するよ」って指摘してるだけ) 内容はいくつも面白い点があるけど、amazonレビュー見たら僕がまとめるまでもなく、 色々適切に書かれてるので、それを使う。 例えば、一国の成長が生産性の向上による発展なのかそれとも単に投入量の増加によるものかの見極めが大切であり、その立場から分析すると、当時脚光を浴びていたメキシコ経済の成長は、単に投入量の増加によるものでしかなく、成長する筈だという前払いを受けているだけだからブームは終わる、という指摘は鋭い。実際、その通りになり、その後メキシコ経済は長期低迷に入っている。また、日本脅威論や、旧共産主義国への脅威論に対する当時の分析も、おおむね正しい結果になっているように、私には読める。 ・国と国との関係を企業と同じように捉えて「競争」を強調するのは事実と一致しないばかりか危険ですらある ・貿易の効果(とりわけ負の効果)が数字の根拠がなく語られることが多いが、きちんとデータをみながら分析することが大切である ・経済学の標準的な理解と現実のデータに照らし合わせるならば、多くの場合において巷で喧伝される貿易の負の側面は存在しない、あるいは無視できるほど小さい などが挙げられます。具体的な中身としては、標準的な経済学と矛盾する自説を唱える俗流経済学者の著作を斬りながら、彼らが金科玉条の如く崇め奉る「競争力」という概念を否定的に論じた第1章『競争力という危険な幻想』、極めてシンプルな2国間モデルを用いて、南北間貿易が先進国に与える影響を分析した第4章『第三世界の成長は第一世界の繁栄を脅かすか』、アジア経済の高成長の牽引役が技術進歩ではなく生産に対する要素投入の増加によってほぼ説明できることから、当時盛んに言われた「奇跡」は何も見られないという衝撃的な結論を導いた第11章『アジアの奇跡という幻想』などが個人的には面白かったです。逆に、日本ではあまり馴染みのないNAFTAに関して論じた第9・10章あたりは少々退屈かもしれません。 うん。こんな感じ。