四十三庵

蔀の雑記帳

ジョン・マクミラン「市場を創る―バザールからネット取引まで」訳瀧澤 弘和, 木村 友二

各所で絶賛されている、マクミランの本。 (各所っつーか、僕が見たのは二カ所だけど) 原題"Reinventing the Bazaar, A Natural History of Markets" John McMillan 「市場を創る」なんていうと、マーケティング戦略みたいなのを想像してしまうが、そうじゃなくて、 財産権や、適切な政府介入なんかによって、上手く機能する市場システムを考えるのが本書のコンセプト。 何章か読んだ時、非常に驚いた。 学者にしては珍しく、常に具体例で、自分の言いたいことを示す。 その具体例がホントに適切かつ詳細かつ幅広いかつ面白い。 古今東西あらゆる例が出てくる。 そして何より、まとまりがない。 ホントにこの本は、「市場について」、ひたすら自分の知見と考察を書いているので、 西にとび東にとぶ豊富な具体例の中で、 自分はどういう目的意識でこれを読めばいいのかわからなくなる時がある。 しかし、素晴らしい本だ。これは。 市場原理主義者はよくいるけど、そういう連中がどれ程市場をわかっているか。 そもそも市場って何よ? その疑問について、これでもかというくらいの答えを呈示しているのが、この本だ。 ・市場というのは、売り手と買い手がいるところ、である。 もっと重要なことに、参加者が自由意思を持つことである。 ・具体例の豊富さには驚く。 いきなりオランダの花市場からこの本ははじまる。 古代アテネのアゴラ、ハノイのバザール、eBay、アフリカのエイズ治療薬と特許、 日本の談合の話、共産主義の非効率な経済の話(ベトナムのトラック、中国の郷鎮企業ソ連自由主義の失敗) ニュージーランドの経済改革、などなど ・共産主義が上手くいかない最大の原因は、情報の問題である。 ・市場は、適切な規制をほどこすことで、理想的な経済を実現できる可能性がある。 つまり、「市場か、規制か」「大きな政府か、小さな政府か」なんていう二元論はもう古いのだ。 ・マクミランさんはゲーム理論の大家なので、 市場を上手く働かせる「制度」の設計が重要だと説いている。 ・所々で茶目っ気を出す文章もいい。 マクドナルドが自分のMc-という接頭語の特許にやかましい話で、 「この本もMcMillanではなく、Millanで出すべきだったかもしれない」 みたいな文章があって、面白かった。