四十三庵

蔀の雑記帳

村上春樹「海辺のカフカ」

村上春樹嫌いなんだけど、これは面白かった。 というか、はじめて読んだのが「ノルウェイの森」で、それがクソだったので、 村上春樹はクソだというイメージがついてしまった。 その次に「風の歌を聴け」を読んだら、まあまあ面白かった。 で、夏休みの暇つぶしに軽く読める小説として、「海辺のカフカ」を選んだんだけど、 なかなか面白かった。 ○ストーリー(言うまでもないけどネタバレしてますよ) 田村カフカ少年(15)は、突如として中野区野方の自宅を家出して、四国へ向かう。 彼の家は、裕福だったが、母と姉は彼が子供の頃に家を出ていて、父との二人暮らしであった。 その後四国に到着した彼は、生きるために努力する。 その中で、人と出会い、その人に助けられながら、何とか生活してゆく。 その一方で、戦時中に、遠足の最中に子供がいっせいに失神するという事件の際に、 知能生涯をわずらったナカタさんという老人が出てきて、 ストーリーはカフカ少年とナカタさん、交互に進んでゆく。 カフカ君は、はじめはビジネスホテルに泊まってたんだけど、 ある日突然自分が森の中にいることに気づいて、バスの中で出会ったさくらという女の子に電話して、 泊まらせてもらい、手コキしてもらう。 翌日そのアパートを出て、私立図書館に泊り込みで働くことになる。 図書館には大島さんと佐伯さんという、二人の人がいる。 佐伯さんは多分カフカ君の母親で、結局死ぬ。 大島さんは色々めんどくさい設定がついてる。 山小屋を持ってて、カフカ君を何度かそこに連れていく。 その山小屋周辺の森の奥が、別世界とつながっていたのだけれど。 ナカタさんは中野区で、猫殺しが趣味の芸術家であるカフカ君の父親を殺す。 そっから逃亡して、ホシノさんというトラックドライバーに四国まで送ってもらう。 かいつまんでいえば、ナカタさんは死ぬ。 でまあ最終的にカフカ君は異世界に行って戻ってきて、 結局の所、東京に帰ってゆく、というお話。 ○感想 「ノルウェイの森」がどうしてクソだったかっていうと、まず精神病の描写が全然うすっぺらい。 恋人の死が究極的にうすっぺらい。全部うすっぺらい。 恋人の死によって、現実感を失ってしまった男の話だとしても、面白くない。 登場した女の子とすぐにベッドインするのも嫌いだ。 「海辺のカフカ」もすぐにベッドインするけど、もうちょっと気がきいてる。 家出した少年がこんな風に簡単に生きているとは思えないけど、 読み進めていくうちにわかったが、どうやらファンタジーの一種だと思った方がいいらしい。 ○解釈 色々解釈できそうだけども、僕個人の解釈を書いとこう。 この小説が出版されたのは2002年。 構想を練ったのはもうちょっと前だろうけど、 恐らくはバブル崩壊後のことであろうと思う。 バブル期の価値観が通用しなくなる時代というものを暗示している。 ジョニー・ウォーカーというのが、金にあかせて、 わかりもしない芸術を見栄のために買い漁っていた日本人であり、 佐伯さんもバブル期の代表。 そしてもう一つ、単純にカフカ君とホシノさんの成長物語という側面もある。 カフカ君は母と姉を見つけ、誰からも必要とされなかった存在から脱出して、東京へ帰ってゆく。 後、その他にも、ジョニー・ウォーカーの仮説がどうとか、 暴力がどう、戦争がどうとかいう話もあるんだけど、 その辺のいかにも村上春樹チックな薄っぺらい思想には興味ないです。