四十三庵

蔀の雑記帳

若者の内向き志向について〜的外れな若者批判の典型として〜

○若者批判の典型
僕の大学はちょっと特殊だから、周りの連中が海外大好きで、
内向き志向はどこいったんでしょうかと思うんだけど、他大の生徒と話すと、確かに内向きの傾向は強い。
最近よくある若者批判に、
「若者が保守的になってる」
「内向きになっていて、元気がない」
「草食系で頼りない」
というものがある。
ざーっとググっただけでも、

日本の、これから 「草食系で何が悪い 若者と語るニッポンの未来」
22歳女が同居男の家賃“滞納”に激高 「脱げ!」と全裸で駅周辺歩かせる
AV女優・蒼井そら「草食男子とか恥ずかしくないの?ニートみたいに名称つけて正当化するな、男なら狩りに出ろ」

などなど。
まあ年寄りが頭悪いのは当然ちゃ当然なんだけど、若者からするとどうも悲しいね。
ちなみに実際に社労士のおじいちゃんに僕が言われた発言。


「最近は女の方が男をラブホテルに誘うっていうじゃない。
私どもの時代は、当然男が誘ったもんだけど」


そうなんですか。女が誘ってくれるなんて、うらやましい。


「日本が不況で仕事がないっていうんなら、何も日本にこだわる必要はないと思うんだよね。
他のアジアの国々とかは、これからどんどん発展してくんだし。
優秀な若者は、どんどん外に進出していけばいいと思う。
でもー、今どんどん留学する人とか減ってるんでしょ?」


ていうかそこまで優秀じゃないと思うけど。


まあそんな感じで、どうやら不勉強なお年寄りの間では、
テレビの毒電波や、新聞の流言蜚語によってすっかり洗脳されてしまったらしく、
上記のような間違った認識を持っているらしい。
そこで私のような、優秀で良識ある若者がやんわりこっそり訂正しようという次第です。
今回、中心的に扱うのは「若者は内向きになってる」という若者批判です。
草食系とかもきくだけで吐き気がするからやってもいいけど、
ただ真面目に反論書くのも馬鹿馬鹿しいという所もあって、どうしようかなあという感じ。


○大抵の親は子供の留学費用を賄えないという現実
そもそも留学を簡単に考えすぎではないかな。
海外留学では、日本で大学通うのとは、段違いの費用がかかる。
1ヶ月、夏休みを使ってニューヨークに留学だかホームステイだかに行く女の子にきいたら、
大学を通じて申し込んだら、100万円かかったそうだ。
(もちろん民間だったらもっと安いトコがあるかもしれないが、その分不安がともなう)


今の家計にそんな余力があるかな。ないよね。
少なくとも僕の家にはない。
バイトして金稼ぐか、奨学金制度を使うしかないんだけど、
まあとにかく費用面から考えても大変なこっちゃ。
日本の大学だったら、私立医学部以外なら、
4年で250万〜400万程度の学費を支払えば卒業できるし、
生活費も一人暮らしでなければ、大してかからない。
まあ地方から都会の大学へ通う人でも、国立の安い寮に入れば、費用はおさえることができる。


一方、海外の大学は、
(ソースはこっからね)


ハーバード大      年間 37,012ドル  四年間 148,048ドル
エール大        年間 36,500ドル  四年間 146,000ドル
プリンストン大     年間 35,340ドル  四年間 141,360ドル
スタンフォード大    年間 37,881ドル  四年間 151,524ドル
マサチューセッツ工科大 年間 37,782ドル  四年間 151,128ドル
カリフォルニア工科大  年間 34,584ドル  四年間 138,336ドル
コロンビア大      年間 41,316ドル  四年間 165,264ドル
ペンシルバニア大    年間 38,970ドル  四年間 155,880ドル
ブラウン大       年間 38,848ドル  四年間 155,392ドル
ダートマス大      年間 38,679ドル  四年間 154,716ドル
コーネル大       年間 37,954ドル  四年間 151,816ドル
シカゴ大        年間 39,381ドル  四年間 157,524ドル
ノースウェスタン大   年間 38,461ドル  四年間 153,844ドル
デューク大       年間 38,975ドル  四年間 155,900ドル
ジョンズ・ホプキンス大 年間 39,150ドル  四年間 156,600ドル
ワシントン大      年間 38,864ドル  四年間 155,456ドル
ジョージタウン大    年間 39,212ドル  四年間 156,848ドル


Oops!1ドル=80円の為替レートで考えても、四年で1000万円くらいかかるよ!
もちろん親が低収入の場合は学費免除規定、奨学金などなどあるようだけど、実際に使えるのかどうかは不明。


○そもそも日本人の内向き志向は昔から
どうも団塊あたりの方々の記憶だと、


「自分達の頃はアメリカへの留学生が腐るほどいて、
素晴らしい業績を残しまくって、日本人は賢いというイメージを振りまいていた」


ということになっているようだけど、大間違い


日本人留学生数の変遷 1954-2008



1954 1,572 4
1959 2,168 38% 6
1964 3,386 56% 5
1969 4,156 23% 9
1970 4,350 5% 8
1971 3,977 -9% 7
1972 4,653 17% 8
1973 4,745 2% 9
1974 5,930 25% 8
1975 7,070 19% 8
1976 7,160 1% 8
1977 9,050 26% 7
1978 10,490 16% 6
1979 12,260 17% 5
1980 13,500 10% 5
1981 14,020 4% 5
1982 13,610 -3% 7
1983 13,010 -4% 9
1984 13,160 1% 9
1985 13,360 2% 9
1986 15,070 13% 7
1987 18,050 20% 6
1988 24,000 33% 3
1989 29,840 24% 3
1990 36,610 23% 2
1991 40,700 11% 2
1992 42,843 5% 2
1993 43,770 2% 2
1994 45,276 3% 1
1995 45,531 1% 1
1996 46,292 2% 1
1997 47,073 2% 1
1998 46,406 -1% 2
1999 46,872 1% 2
2000 46,497 -1% 2
2001 46,810 1% 3
2002 45,960 -2% 4
2003 40,835 -11% 4
2004 42,215 3% 4
2005 38,712 -8% 4
2006 35,282 -9% 4
2007 33,974 -4% 4
2008 29,264 -14% 5


78年にようやく1万人を超えた。それ以前はずーっと千人台で推移。
昔はめちゃくちゃ少なかったんですね。留学生。
逆に多くなったのは、バブル以降、金にあかせた親が多くなって、
「よーしグローバルリーダーにさせるために、留学させるワ」
とでも思ったのでしょうか。
バブル崩壊以降もこの流れはしばらく続いた。
が、近年は著しく減少中。


なんでじいさんの脳味噌にノイズが混じったか、というと、
なにもじいさんの脳味噌が耄碌しきっているからではなく、
昔の留学生は、数は少なくとも、ノーベル賞とったり、世界的な発見したり、
とにかく存在感が大きかったので、ついついそういうイメージにひっぱられて、
「昔は留学生いっぱいいた」と思い込んでしまったんだろう。


○合理的選択の結果としての内向き
アメリカの大学は素晴らしいと思うが、日本を中心に働く場合、必ずしも留学経験は役に立たなかったりする。
もちろん学歴超重視の、投資銀行だとか、その他諸々の会社では役に立つだろうけど、
一般的に日本で「大企業」と呼ばれる所だったら、
ヘタに留学するよりも、東大京早慶あたりに入って、就職する方が、ずっと楽だし、ずっと手っ取り早い。


とはいえまあビジネスの世界でのし上がりたいという人なら、
金融だとか、経済/経営学だとかは、アメリカの方がずっと進んでるので、
むこうでMBAとるといった行動は、将来の高収入に割と直結するのではないかと思う。
また、語学の勉強であるなら、留学は確かに一番いい勉強法だと思う。
語学留学のための留学、というのは非常に自然だ。


しかし理系の場合、どうだろうか。
日本の大学も、結構充実してるし、レベルの高いことをやっているそうだ。
最先端の研究がしたいから、留学するという人もいるだろうが、
現状ではあまりうまみがないのではないか。


事実、日本人留学生の人気専攻分野は次のようになっている(ただし1997年ので、大分古い)。

・大学学部課程
1.ビジネス(20 .9%)、2 .社会科学(14 .3%)、3 .芸術(14 .1%)、4 .人文科学 (4 .6%)、理学・生命科学(3 .7%)

・大学院課程
1. 社会科学( 23.6 %)、 2. ビジネス( 19.0 %)、 3. 芸術( 9.7 %)、 4. 教育( 9.1 %)、 5. 人文科学( 8.1 %)


語学はどこにいったんだろうときいてみたい所だが。
以上から、ビジネス・語学(後強いて言うなら芸術)に関する留学は有益だけれど、
それ以外が目的の留学は大してうまみもないし、人気もないといえそう。


日本で就職して、日本で死ぬつもりの人間であるなら、留学のうまみは薄い。
留学というのは、


多額の費用がかかって、
異文化の中で生活して、
治安が悪い所(日本より治安がいい国はあまりない)で暮らす、


という費用を払い、


最先端の学問を学び、
海外の色んな人と出会い、
他言語を習得して、
人間として大きく成長する


という便益を得るものだ。
現状の日本で、留学の費用と便益を考えたら、そりゃあ留学しないで、
日本国内のそこそこいい大学を大人しく出ましょう、というのが、合理的な選択じゃないかね。


・参考
米国の大学:緩やかな衰退


○総括
以上から、


・若者の留学減少は大抵親の資金不足
・日本人留学生が少ないのは昔から
・留学減少は、もちろん若者の閉鎖性から来るものかもしれないけれど、
 合理的な選択としての「留学しない」ことも、今の日本の現状では十分ありえる


という結論に至る。