四十三庵

蔀の雑記帳

片岡剛士「日本の失われた20年 デフレを超える経済政策に向けて」

なかなか面白い本だった。
読むの辛かったけど。


○まとめ
・序
本のアウトラインが述べられている。
「政策の実行ラグ」という本書で繰り返し登場する概念も説明される。


・1、世界金融危機
サブプライムローンの信用危機から発生した、リーマン・ショックと総称される一連の世界金融危機について書かれている。
まず、アメリカに住宅バブルが発生していた点、
世界的な経常収支不均衡(グローバルインバランス)が金融危機の背景となったこと。
そしてサブプライムローンの説明も書かれている。
正直難しすぎて、僕も完全には理解できてないが、一応簡単にまとめる。
サブプライムローンは、低所得者向けの住宅ローン(民間)である。
アメリカでは住宅価格が一貫して上昇していたため、
低所得者に貸し付けても、いざとなれば家が担保となるので、貸し出しは拡大していた。
そしてそのサブプライムローンを、「証券化」したのが、今回大規模な金融危機につながった。
「証券」となったサブプライムローンは、投資家の売買の対象となる。
つまり、


家計(ローンの借り手)

金融機関(ローンの貸し手)

証券化機関

投資家


という図式になる。
本来の住宅ローンは家計と金融機関の関係であって、もし家計がローンを払えなくなれば、
金融機関が困るだけなのだが、今回の問題はこういう図式があったため、金融部門全体がダメージを受けた。
利回りのよい投資先を探していた様々な機関が、この証券に食いついた。
で、こっから僕にはよくわかんないんだけど、


サブプライムローン債務担保証券(CDO;Collateralized Debt Obligations)になったこと、
レバレッジが掛けられたこと、
CDS(Credit Default Swap)でリスクをヘッジするのが出来たこと、


が人気に拍車をかけたらしい。
サブプライムローンには、当初格付け機関がAAAをつけていたため、
結構な有名会社も投資先としてサブプライムローンを選んでいた。
(ところが、上記のような複雑なプロセスを経ていたため、
投資していた連中も、自分が何に投資しているのかよく把握できていなかったようだ)
ところが、2005年頃のFRBの利上げによって、住宅ローン金利も上昇。
住宅価格の伸びがとまり、サブプライムローンの滞納が急増、2007年に入ると、関連会社の経営破綻が続出した。
ハイレバレッジは一気にマイナス方向に大きく作用し、アメリカの金融は大いに動揺した。


・2、日本経済の現状
日本の「失われた二十年」の分析。
TFP(全要素生産性)低下を否定したり、GDP成長率の要因分析とか色々してるけど、
結論的には実物的現象・貨幣的現象の二つのうち、貨幣的現象が原因とされる。
実物的現象は、消費・投資・生産の停滞。
貨幣的現象は、物価・為替レートが実物的側面に影響していると考える。


・3、デフレの原因分析
消費者物価指数(CPI)には上方バイアスがあり、GDPデフレーターには下方バイアスがある。
また、ラスパイレス方式は上方バイアスを、パーシェ方式は下方バイアスを持つ。
そのため筆者は、GDPデフレーターを物価の基準として重視している。
で、筆者は貨幣供給量(マネーストックマネーサプライも同義)が低下してことを原因としてあげている。
信用乗数が低下し、銀行の信用創造機能が下がったのが、直接の原因である。


・4、失われた20年の財政・金融政策の評価
財政政策は、地元の利権を結びついた非効率な税金の使われ方をしたし、
日銀の金融政策は、円高という制約の中で、量的緩和政策は不十分なものとなった。


・5、世界同時不況下の財政・金融政策
民主党政権に対する提言など。
要するに「今までの財政・金融政策は規模が小さい」という結論。


・終、経済政策はどこへ向かうか
エッジワースのボックスダイヤグラムを用いて、これからのあるべき政策を解説。
ただし「拡張されたエッジワースボックス」であって、
通常のエッジワースボックスをαゾーンとし、各経済主体の最低生活費を設定しているのが大きなポイント。


○感想
全体的には有意義だった。
普段抽象的に学んでいる経済学の論理を、実際の経済の事象にあてはめているので、面白い。
この前バブルの本を読んで、今回「失われた20年」だったので、なかなか順序もよい。
わが大学の中里透の研究も引用されていて、真面目に仕事してんだなーと思った。
「財政学」をとろうか迷ってて、一回出席したら、
何でもいいから質問しろというので、「なぜ経済学者になったんですか?」ときいたら、
「経済学者は天気予報と似ている所があって、云々かんぬん」
というよくわからない答えを頂いて、
「答えになってるかな?」
と言われたので、とりあえずお礼言っといたが、さっぱりわからなかった。
が、これを読んだら、何となく言わんとしていた意味がわかった。
天気予報は当たらない可能性も高いが、誰も無意味だとは思わない。
経済学の予想も、当たらない可能性は極めて高いが、無意味ではない、ということであろう。