四十三庵

蔀の雑記帳

堤未果「ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書) 」

アメリカが格差社会なのは周知のことだが、ではその貧困層がどうなってるのかはあまり知られていない。
第一章では、アメリカ特有の常識では考えられない肥満が、貧困と関係していることが述べられる。
第二章では、ルイジアナ州を襲ったハリケーン「カトリーナ」が、
ブッシュ大統領の執拗なコストカット・民営化によって被害が拡大したという話。
第三章はアメリカの医療制度。
「ジョンQ」「シッコ」という映画に描かれたように、アメリカの医療費はとんでもない。
第四章は、貧困層の若者がどうして軍隊に行くのかという話。
第五章は、イラク戦争の際に行われた「派遣会社」の実態について。

著者はアムネスティ・インターナショナルに所属していた経歴がつくほどのバリバリの左派なので、
途中で憲法九条がどうだとか、「いかにも」な話に急にもってくけど、まあいい。
これもアメリカという国の一つの姿だと僕は思う。
確かに、ジャーナリズムジャーナリズムとぬかすわりには、終始被害者側の理屈だけに終始した、
非常に偏った視点ではあるけれども、実際コレもアメリカの姿だろう。


経済学の理論では、発展途上国の人間が低賃金で働くのも、
「仕事がないよりはマシ」ということになっているが、倫理的にはそうも言ってられない。
ただだから「市場はいかん」という話ではない(著者はそういう方向に持っていきたいんだろうけど)。
きちんと経済学をやった人間なら、「市場が万能である」なんていう寝言は言わない。
ただ、資源分配に関して、市場が効率的であって、その結果が果たして望ましいかどうか、
その価値判断は「人間」がしなければならない。