四十三庵

蔀の雑記帳

チャイナリスクは発展途上国リスクである

チャイナリスクについて
ガイアの夜明け」を珍しく見る。
チャイナリスクの話であった。
急成長する中国の日本工場では、中国人労働者のストが問題となっている。
様々な要因があるが、基本的には「待遇が悪すぎる」ことに尽きる。
二人の日本人社員が、百人以上の労働者を管理しているらしい。
食堂は中国人と日本人で別。
出される料理は、地方の出稼ぎ労働者でさえ、
「口に合わない」と言って、大半を廃棄するような代物。
中国人労働者の雑談では、「日本人の月給は俺達の年収を足して二倍したくらいだろうな」などと言われている。


○経済学の成長理論について
経済学の理論では、発展途上国で先進国の企業が低賃金で馬車馬のように現地民をこきつかうのを肯定する。
結局その企業が撤退すれば、発展途上国では、更に低賃金で劣悪な仕事しか残らないからだ。
現地民は、低賃金で働き続け、先進国から技術・資本を盗む。
いずれ低賃金にもとづく競争力により輸出を増やし、そのうち外貨を貯める。
そしたらようやく生活水準も向上して、労働環境も改善、ついでに民族紛争も解決、政治腐敗も一掃、
馬鹿でも大学に行けて、身長もぐんぐん伸びて、(この二つはあながち嘘でもない)
発展途上国はもはや先進国の奴隷ではなくなる、というのが経済学的シンデレラストーリー。
この理論には二つの問題がある。


1、実際そんなことできんの?
2、生活水準が向上するまでの間の劣悪な労働環境には、倫理的な問題がないっすか?


1。
がんばれば出来る国もあります。
でも民族紛争ばっかしてるアフリカのアホ国家辺りは永遠に無理な気もします。
(ちなみに最近はアフリカの国々の中でも南北格差が出来つつある。
国単位で見ると割合成長してきてる国もあるんで、アフリカ=発展途上国なんて考えてたら、
屈強な黒人に取り囲まれてケツの穴をメチャクチャにされますよ?)
その代表格というか、上記の発展途上国の成長プロセスを踏んで現在一番経済的に成功したのが中国である。
日本も含めていいんじゃないかと考える人もいるだろうけど、僕は違うと思う。


2。
問題ありまくり。
アメリカはGDP規模で世界一だけど、所得格差も相当なものがある。
世の中には99%の国民が飢えてて、1%の人間が贅沢三昧という国もあって、
そこでは馬鹿高い所得格差が存在する。(北朝鮮南アフリカなど)
そういう国は、共産主義共産党が絶対的権力(ついでに軍事力)を握っていたり、或いは王族が力を持ってたり、
GDPが低いけど地下資源が豊富で、資源を持つ者はメチャクチャ金持ちであったりする。
でもアメリカの格差っていうのはちょっと違う。
世界ナンバーワンの富める国の中に、どうしようもない貧民が住んでいるのだから。


話が若干逸れてるけど、発展途上国と先進国の関係でも同じ。
具体的な話をすれば、年収が1億円ある資産家(資産総額1兆円)がいて、
別に年収100万円の六人家族がいる。(ホントはドルの方がいいんだろうけど)
六人家族は餓死するか、子供を働かせるかするしか方法がない。
餓死を防ぐために必要な資金は後60万円。(月々5万ね)
少し人間らしい暮らしをするためには400万円くらいあると嬉しい。
父親は中卒で、特に能力や資格がある訳ではない。ついでに移民かなんかで言葉もあやしい。
資産家の会社で、「誰にでも出来る仕事」をして、なんとか年収100万円稼いでいる。
母親は幼い頃に事故で左目と片腕を失っているため、通常の条件では働けない。
他の四人は全て子供。
この家族には何が必要だろうか?
どう考えても、1億円の中から、400万円削ってやりゃあいい。
そうすれば資産家の年収は9600万円、六人家族は500万円になる。
双方幸せに暮らせる訳だ。
まあこの辺の話は本筋からずれるんで、こんなもんにする。


発展途上国リスク
冒頭のチャイナリスクはもう少し一般化できる。
経営者にとって、安い賃金で唯々諾々と働く労働者は非常に望ましい。
利益を出すことを至高の目標にする(当然だから、批判する訳じゃないけど)経営者は、
グローバル化で、二十一世紀型の洗練された奴隷を手に入れて、非常に喜んだ。
よだれ垂らしながら、海外進出へ尽力し、「国境の壁をこえたビジネスを」なんて耳当たりのいいことを言いながら、
いかにも優秀な経営者面しながら、発展途上国に工場を建て、生産拠点を移転していった。
しかし発展途上国も、いつまでも発展途上国な訳ではない。
中段の経済学的成長プロセスがまともに機能して、発展途上国が成長すれば、
もはや奴隷的であった労働者は、人間らしい暮らしを求める。先進国並の待遇を求める。
そうなれば経営者があれ程嬉しかった発展途上国のメリットが、全く消えてしまう。
(基本的に産業を海外に移すメリットは人件費がとてつもなく安く抑えられるから成り立つのであって、
人件費のひどい格差がなくなれば、輸送費だ何だと、国内でつくるよりも費用がかかる。
もし仮に彼らの待遇を、国内と同じ水準まで引き上げると、国内で製作しているよりも割高になってしまう)
これが発展途上国リスクだ。
こうなってしまうと、人件費が抑えられると思って海外に建てた工場も、全て逆効果となってしまう。