四十三庵

蔀の雑記帳

「コア・テキスト経済史 」岡崎 哲二

コアテキストシリーズが好きで、全部読もうと思う。
「制度と組織の研究史」という視点の経済史の教科書なので、
ヨーロッパの歴史を事細かに記述して、ラッダイト運動がどうだとか、そういう話をする内容ではなかった。
170ページ程度と、かなりコンパクトにまとまっているが、内容は非常に面白く、簡潔にまとまっている。
普通経済史というと、「数学が出来ないけど経済学に関わっていたい」文系人間のための分野という感じだけど、
本書では経済成長モデルが出てきたり、至る所で統計学的な分析が出てきたりするので、面食らうかも。


面白かった点を列挙する。
○日米の離職率
「終身雇用」が日本人の国民性に根ざしていると言われるが、
実際は戦前の日本人の離職率は現在のアメリカ並の高水準であった。
(グラフ付き)


マネタリズムについて
M2変化率と、実質/名目GNP変化率、GNPデフレーターは相関関係を持つ。
(これもグラフ付き)


○経済成長とシステムについて
本著では、経済成長と宗教、商業制度の質、銀行システムなどは相関関係を持っていることが示されている。
また前近代的な銀行では、融資先が血縁関係などで決定していたけど、それもある程度合理性があったという話。
預金が少なかったため、自己資本比率が高く、前近代ではそういう経営も成り立った。
日本の金融恐慌の頃の銀行は、機関銀行なんて言われて、散々非難された訳だけど、
実は経済学的な金融恐慌の原因として、大正期の預金残高の急上昇(5倍くらいになってる!)のせいで、
自己資本比率が低下していたこと。
東南アジア金融危機の際は、クローニーキャピタリズムとか言って、
銀行の王族などの血縁者にだけ低金利で貸し付けていた事実に非難が集まりました)


すらすら読める割に、内容も非常に含蓄深い、良著だった。