四十三庵

蔀の雑記帳

日本人はなぜ英語が下手なのか?〜そのシンプルな理由〜

日本人は英語が下手だそうです。
特にそれを指し示すデータがある訳でないんですけど、
なんで皆当たり前のように「日本人は英語が下手」という言説を受け入れているかというと、
恐らく個人的体験に基づいているんだと思います。
僕も覚えがありますが、中学・高校では相当英語に苦しめられました。
帰国子女だとか、よほど外国語習得に特殊な才能があるとかでない限り、
仮に大学受験以降には英語がそこそこできるようになっている人でも、
人生のどっかで英語に苦しんだ経験は持ってるんだと思います。


クラスを見回してみても、英語が得意な生徒なんてほとんどいませんでした。
高校生が苦しむ科目は、英語と数学と大体相場が決まっていました。
そういう経験があるから、「日本人は英語ができない」という、
実は客観的な証拠がない言説でも、割と抵抗なく受け入れるんだと思います。
とりあえず今日の所は、「日本人は英語が下手」という前提で話を進めましょう。


●たった一つのシンプルな理由
英語教育がどうとか、歪んだ完璧主義だとか、
色んな原因が指摘されるんですが、実は日本人の英語下手な理由は、根本的にはたった一つです。
それは
「英語と日本語が違いすぎる」
という、言語的な理由です。


そもそも英語は世界一簡単な言語と言われます。
(これもまた「言われます」ですが)
その簡単な言語が出来ない日本人はどうしようもない外国語音痴で、
国際性の欠片もない、グローバル化著しいこれからの世界で完全に時代遅れとなった、
劣等民族なのでしょうか?
しかしよう考えてみてください。
日本語ペラペラの、アメリカ人はどのくらいいますか?
「てにをは」をまともに使える外国人はどのくらいいますか?
「英語は難しい」ということを高校で一度は口にしたことがあると思うんですけど、
なんで難しいかというと、「日本語との差が大きすぎる」ので、難しく感じるのです。
理論的に世界一簡単とはわかっていても、実際問題、難しく感じてしまうのです。
では何がそんなに違うのでしょうか?


●歴史的背景
言語学には、○○語族という分類法があります。
これは同一の言語が源になっている言語をひとまとめにくくろうという発想で、
つくりだされたもので、wikipediaの画像によるとこんなんです。

字がよく見えない人はこちら
これを見ると、ヨーロッパはあれだけたくさんの言語がありながら、
実は語族で見るとほとんど三つくらいのグループでしかないのがわかります。
日本はなんかおかしなことになってますね?
Isolate語族ってなんだよと思った方はもうちょっと英語を勉強しましょう。
実は日本語はこの分類法でわけると、グループにならないんですね。
島国という地理的な特性もあって、日本語は言語として孤立しています。
「漢字使ってるから中国語と同じグループじゃ?」と思うかもしれませんが、
漢字は同じでも、「使い方」は全然違いますよね。
日本語は漢字とひらがな、カタカナ、アラビア数字、アルファベットをまぜこぜにして使うし、
読み方も中国語のチャントゥンシントゥンフォンみたいな発音とはこれまた全然違う訳です。


東アジアでさえ孤立している言語ですから、ヨーロッパ語との言語上の違いというのは、
これはもう壮絶なものとなるのです。
三つにわけて考えていきましょう。
・文法
・発音
・文字


●文法の違い
日本語は主語があまり重視されず、往々にして省略されます。
高校の思い出ついでに書くと、『源氏物語』での主語の省略っぷりは、
日本人の末裔である我々でさえも齟齬をきたす程なのですが、
それでも主語がなくても文章が成り立つのが日本語です。
最近は英語の影響で、しっかり主語を書いてわかりやすい文章を書くのが
推奨されますが、文学の世界なんかではあんまりわかりきった主語をごちゃごちゃ書いてると、
かなり印象がよくないものです。
英語でも主語を省略してはいけないということはないんですが、普通主語+述語で構成されます。
しかも英語は語順が決まっていて、日本語のように勝手な順番で単語を並べることはできません。
I think Aoi Sora is the most beautiful woman in Japan.

think Aoi Sora,I,is the most in Japan woman beautiful.
と並べると怪文になってしまいます。
日本語なら、
「思うに蒼井そらってさ、俺は、一番、日本で、女性で、美しい」
と、英語ほどの怪文にはなりません。
日本語も「何でもあり」という訳じゃないんですが、明らかに自由度が高いのがわかるでしょう。
助詞の役割が大きいんだと思いますが。


英語はヨーロッパ語の中では、文法的制約の緩い言語ではあるんですが、
(疑う者はドイツ語・フランス語・ラテン語ギリシャ語などを参照)
「日本語との差」で考えると、けして英文法の制約は緩くない訳ですね。


●発音の違い
KARAが割と普通に日本語で曲歌ってるの見てもわかるとおり、
日本語の発音はかなり簡単です。
五十音+濁音、促音だけしか音がないです。
ところがヨーロッパ語の発音というのは、無声音だとか、破裂音だとか、
果てはイタリア語なんかは巻舌の発音とかがあるそうで、
間違いなく日本語より発音が難しいことは間違いないでしょう。


日本語はアクセントなんかどうつけたって意味は通じます。
標準語のイントネーションの方がききやすいけれど、
別に関西弁のアクセントじゃ意思疎通が出来ないなんてことはない。
ところが英語だと、アクセントの場所で随分意思疎通に影響が出る。
僕自身は母語が日本語なので、
英語話者がどういう風にきこえてるのかはよくわからないんだけど、
あれだけ早いスピードで話しているせいか、アクセントでききわけてる部分があるようです。
これも日本語ではありえない。
片言でも日本語は喋れば通じる。


●文字の違い
発音はヨーロッパ語に比べると楽な日本語だけれど、
これが書き文字となると、話は逆転します。
アルファベットはたった26文字だが、日本語はひらがなだけで五十字。
カタカナで五十字。しかも漢字が恐ろしい数あるので、
外国語話者にとっては正しく日本語で文章を書くなんていうのはほぼ絶望的になります。


これは日本語→英語ではあまり問題にならないですが、
英語→日本語だと死ぬほど深刻な問題になる訳です。


●なぜ日本の英語教育はクソなのか?
この発音と文字の違いがわかれば、なぜ日本の英語教育がクソなのかもわかります。
日本の英語教育は、「読み」「書き」にウェイトが置かれ、
最近はやや「聴く」部分も重視されるようにはなりました。
(大学受験の問題を見るとよい)
「話す」ことは相変わらずおざなりになっています。
そのせいでよく日本人は英語六年勉強したのに、長文読解だの空語補充だのをやっただけで、
道案内の一つもできずに終わるという非難を浴びる訳ですが、
それはそもそも何がいかんのかというと、日本人が英語を発音できないからいかんのです。