四十三庵

蔀の雑記帳

人は過去から学ばない

ローレンス E. リフソン他「投資の心理学―「損は切って利は伸ばせ」が実践できない理由 」
を読んで面白かったのは、
「人は過去から学ばない」
ということを、心理学者が自明のこととして書いていた所だ。


●そもそも歴史を現代に適応することが難しいという話
ビスマルクの有名な箴言に、
「愚者は(自分の)経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
という言葉があるが、実際問題歴史から学ぶ人間なんていうのはほとんどいない。
その上、現代我々の生きている時代は、WWⅡ前とは大きく異なっている。
何が違うかといえば、富の量。
ビスマルクの生きてた時代っていうのは、
もし異常気象や疫病の流行が起これば、瞬く間に人口が激減した、そんな時代だ。
倹約はもっと純粋な美徳であった。
富の量が現代とはケタ違いに少なかったからだ。
もっと平たく言ってしまえば、貧しかった。
更には科学的知識の蓄積もなかった。
(自然科学の驚異的な進歩は二十世紀に起こった)
前提条件が全然違う。
そんな歴史から、ただでさえ物を考えない現代人が何かを学べるか?
不可能だろう。
(疑う者は3・11の津波と歴史について考えてみよう!)


●過去から学ばないのは愚者だからか?
そもそも「人間が過去から学べる」と考えること自体が間違いなのであろう。
ビスマルクは賢者であったから、意識的に学ぼうと自己教育して、
それがある程度出来たのだけれども、自然な人間の思考は、
「過去から学べない」ようにできている。
○忘却の空
人間は忘れる生き物である。
忘れるから膨大な情報を処理できる。
データを消去できないコンピューターに膨大な量のファイルをダウンロードしまくったら
どうなるか予想できると思う。
人間の脳も適度に忘れるようにできている。
人間が過去から学べない原因はこの記憶プロセスにある。
津波にしたって、実際に二度目の大津波が来てから、「過去の歴史に〜」と主張することはできる。
しかし災害の前に
「二度目の大津波が来る可能性に備えて対策しろ」
と真剣に主張することはできない。
目の前には福祉だとか、介護だとか、過疎化対策だとか、
やるべきことは山積していて、大津波の対策は後回しになる。
いつまで後回しにされるかっていったら、実際に二度目が来るまで。
○世代交代
「後世に伝えていかなければいけない」記憶は伝わらない。
まず伝わらない。
子孫は伝わっているフリをしているだけで、実は何も学ばないし、
先祖は伝えているつもりだが、何一つ伝わっていない。
時代、時代で問題意識は変わっていくもんであって、
いくらご老人達が「二度とあの悲惨な戦争を繰り返してはならない」と思っていても、
僕らは「お前らの年金をどうやって拠出するかが問題なんだよ」と思っている。
いつの時代も老人は自分の箴言を活かさない若者に憤っているものだ。
孔子の時代から連綿と受け継がれている伝統と言ってもいいね。


●相場と人間
大分歴史的な方面から話したけれど、
「過去から学ばない」のが一番顕著に出るのが相場である。
だって我々は「不確実な未来」と戦っている時に、過去を思い出したりはしない。
新しい女の子を口説いている最中に元カノを思い出す馬鹿がいるかね?
だから何度でも同じ失敗を繰り返す。
損切りすべきなのに何度でもナンピンして損をふくらませるし、
レンジ相場で何度でも損切りを積み重ねてコツコツ損を膨らましていく。
ただ人間、過去から学ぶことはないが、感情から学ぶことはある。
何度も同じ失敗をすると、流石に恥を感じるし、自己否定に苛まれる。
そこでようやく学ぶ訳だ。
そしてまたしばらくたつとその教訓を忘れる。
それが人間なのである。
(参考)
富と権力
結構気合入れて書いた記事だけど、やっぱ大して面白くないせいか、誰も読んでくれてない。