四十三庵

蔀の雑記帳

一億総白痴化という現象

wikipediaによると、「一億総白痴化」という言葉は

社会評論家の大宅壮一が生み出した流行語である。「テレビというメディアは非常に低俗なものであり、テレビばかり見ていると、人間の想像力や思考力を低下させてしまう」という意味合いの言葉。

だそうである。

しかしそれとはまた別に、現代の日本での一億総白痴化の話。

  • 日本の知の大雑把な歴史

戦前の日本の教養主義というのは、それはそれは空疎なものであった。
内容的には大したことじゃないようなことを、仰々しい難解な用語で飾り立てる衒学趣味が横行していた。
日本の「アカデミズム」とは即ちそういう意味だった。
戦後もしばらくその教養主義は続いた。
大学の食堂では、マルクスの「資本論」の議論ができなければ飯が食えなかった、という。
教養主義がどういうものか知りたければ、サルトルでも読んで木の根で吐き気を催せばいい。

しかし戦後、それは長く続かなかった。
教養主義への反発から、大学紛争が起こった。
大学紛争・学生運動は美化されがちなんだけど、要するに戦後、上流階級以外の一般庶民が大学行くようになって、
大学が「末は博士か大臣か」のエリート育成装置だった時代の遺物である、
教養主義のカルチャーが、その庶民どもにとっては嫌だった。
まあ子供の駄々みたいな話でして。

その是非はともかくとしても、
九割の「知識人」にとって、「自分でも何言ってんのかわかってない」状態に陥っていた教養主義が終焉を迎えて、
「誰にでもわかる言葉」で、「本当に大切なこと」を語り合おうという姿勢が一般的になった。
村上春樹の小説を何か紐解いて見ればよろしい。

  • そしてどうなったか

教養主義から平易明瞭路線へのシフトというのは必ずしも悪いことではない。
しかしそれが「一億総白痴化」という現象を引き起こした。
つまり少しでも複雑で、頭を働かせなくてはならない内容は、
すべて「衒学的」(スノビッシュともいう)
「馬鹿にでもわかる言い方をするのが本当に頭のいい人」と切り捨ててしまえばいい。
その結果大卒の資格を持っていてもほとんど知能を持っていなかったりする。
自分の頭で考えることを放棄した人間が世の中に溢れると、
理論的に正しいものよりも、強い影響力を持ったものが強い世の中になる。
テレビがどう報道するかで、内閣の支持率はほぼ決まる。
野田首相の堅実な人柄は信用できる!」
「麻生総理はボンボンで偉そう。鳩山首相は信用できる!(え?どう違うの?」

僕の考える一億総白痴化というのは、何とかという社会評論家の言ってた「テレビが日本人を堕落させる」というものではなく、
「日本人がアホになった」から、テレビごときを真に受けるんだという話。
(参考)
「影響力の武器」ロバート・B・チャルディーニ

  • 白痴化の一例

2009.11.21 慶応2年から平成22年までのベストセラーをリストにしてみた(追記あり)
一つの例として、ベストセラーのリストをあげよう。

1959年  (昭和34年)
にあんちゃん』安本末子(光文社)
『日本の歴史』岡田・豊田・和歌森他編(読売新聞社
『少年少女世界文学全集』安部能成他編(講談社
『波涛』井上 靖(講談社
『催眠術入門』藤本正雄(光文社)
『論文の書き方』清水幾太郎岩波書店
『日本文学全集』新潮社編(新潮社)
私本太平記吉川英治毎日新聞社
『世界文学全集』阿部・桑原・中島他編(河出書房新社
敦煌』井上 靖(講談社

 ---------------------------(この辺から質が落ちてくる)--------------------------------

1960年  (昭和35年
『性生活の知恵』謝国権(池田書店
『頭のよくなる本』林髞(光文社)
『どくとるマンボウ航海記』北 杜夫(中央公論社
敦煌』井上 靖(講談社
『人生は芸術である』御木徳近(東西五月社)
『私は赤ちゃん』松田道雄岩波書店
『性格』宮城音弥岩波書店
『鳥葬の国』川喜田二郎(光文社)
『河口』井上 靖(中央公論社
『黒い樹海』松本清張講談社
(中略)
1971年  (昭和46年)
『人間革命(6)』池田大作聖教新聞社
『冠婚葬祭入門』塩月弥栄子(光文社)
日本人とユダヤ人』I.ベンダサン(山本書店)
『冠婚葬祭入門(続)』塩月弥栄子(光文社)
春の坂道(1〜3)』山岡荘八日本放送出版協会
『HOW TO SEX』奈良林 祥(ベストセラーズ
『誰のために愛するか』曾野綾子青春出版社
『ラブ・ストーリィ』E.シーガル(角川書店
『冠婚葬祭入門(続々)』塩月弥栄子(光文社)
戦争を知らない子供たち北山修(ブロンズ社)
(中略)
1983年  (昭和58年)
『気くばりのすすめ』鈴木健二講談社
積木くずし穂積隆信桐原書店
探偵物語赤川次郎角川書店
和田アキ子だ文句あっか!』和田アキ子日本文芸社
『老化は食べ物が原因だった』B.フランク(青春出版社
『気くばりのすすめ (続)』鈴木健二講談社
『女らしさ物語』鈴木健二小学館
『メガトレンド』J.ネイスビッツ(三笠書房
『佐川君からの手紙』唐 十郎(河出書房新社
『意識革命のすすめ』広岡達朗講談社

1984年   (昭和59年)
プロ野球しらなきゃ損する』板東英二青春出版社
プロ野球これだけ知ったらクビになる』板東英二青春出版社
『ソープバスケット(1・2)』日本フラワー技芸協会編(二見書房)
『愛情物語』赤川次郎角川書店
『メインテーマ(PARTl〜3)』片岡義男角川書店
『人生汗と涙と情』浅尾法灯(講談社
『新常識わが家の銀行利用法』野末陳平他(青春出版社
『愛、見つけた』小林完吾(二見書房)
『告白ハンパしちゃってごめん』高部知子ワニブックス
『第四の核(上・下)』F.フォーサイス角川書店

1985年  (昭和60年)
スーパーマリオブラザーズ 完全攻略本』ファミリーコンピューターマガジン編集部編(徳間書店
アイアコッカ』リー・アイアコッカダイヤモンド社
『科学万博つくば 85公式ガイドブック』国際科学技術博覧会協会編(講談社
プロ野球殺られても書かずにいられない』板東英二青春出版社
『わが家の確定申告法』野末陳平青春出版社
首都消失(上・下)』小松左京徳間書店
豊臣秀長(上・下)』堺屋太一(PHP研究所)
ダーティペアの大逆転』高千穂遥早川書房
『ああ人間山脈』松山善三潮出版社
スーパーマリオブラザーズ裏ワザ大全集』フタミ企画編(二見書房)
(中略)
2008年  (平成20年)
ハリー・ポッターと死の秘宝(上・下)』J.K.ローリング(静山社)
『夢をかなえるゾウ』水野敬也飛鳥新社
『B型自分の説明書』Jamais(文芸社
『O型自分の説明書』Jamais(文芸社
『A型自分の説明書』Jamais(文芸社
ホームレス中学生』田村裕(ワニブックス
『女性の品格 装いから生き方まで』坂東眞理子(PHP研究所)
『親の品格』坂東眞理子(PHP研究所)
『AB型自分の説明書』Jamais(文芸社
『脳を活かす勉強法 奇跡の「強化学習」』茂木健一郎(PHP研究所)

何をもって「頭がいい」と定義するのかっていうのも、色々議論があるとは思う。
「恋空」読んでた女子高生と、「資本論」読んでドヤ顔してた左翼学生のどっちが頭いいのかは非常に難しい話だ。
明確に定義はできないけれど、このリストを読む限り、現代の日本人の頭は悪く見えるし、多分実際悪くなっている。
(否定することもできないではないけど、否定するのは不自然じゃないか?)

  • で?

普通この手の主張っていうのは、

「これこれこういう問題がある!」(ここでは一億総白痴化

「だからこうやって解決しよう!」(大抵実現性ゼロの理想論)

とセットになってるもんだと思うんだけど、当ブログの記事は大体「どうしようもない問題」について書くことが多い。
だからまあ対策はないから、そういう問題があるんだと織り込み済みにして、
これから生きていこうぜというのが、僕の主張となります。