四十三庵

蔀の雑記帳

少子高齢化が当面の日本最大の問題であること

  • 日本最大の問題は何か

日本はここ20年不景気が続いている。
「失われた20年」と呼ばれている。
デフレが〜、硬直的な雇用制度が〜、新卒一括採用が〜、政府が〜、円高が〜、
大学が〜、若者が内向きで〜、日本企業の柔軟性のなさが〜、とか色々問題はある訳だけれども、
実は最大の問題は

少子高齢化

である。
これほど、経済、社会、文化に大きな影響を与える大問題はない。
新卒一括採用は確かに問題かもしれないし、政治家が無能ぞろいで決定力がないのも、日本にはよくない。
よくないけれど、一番大きな問題ではない。

少子高齢化は問題だ、という認識はまともな日本人であれば、大体持ってると思う。
けれど実際はあんまり口角泡を飛ばして少子化の解消に向けて議論する、なんていうシュチュエーションは想像できない。
民主党のアホ大臣を「辞めて当然だよな〜」と言い合ったり、公務員の天下りに憤ったりすることはありえても、
少子高齢化で盛り上がることはあんまりない。
勝間和代が「少子高齢化を解消しよう!」なんてドヤ顔で主張してる場面は想像できない。
少子高齢化問題は受けが悪いのだ。
基本的に少子化というのは、自由恋愛制のもとでは個々人の自由意志で結婚・出産を選ぶ人間が少なくなっていて、
解消するためには、憲法のもと自由を保障されているはずの日本人に、
「日本社会のために子供をつくろうぜ」
と主張することになる。
ただどこぞのアメーバみたいに、無性生殖で子供を増やすことができない哀れな哺乳類である我々人間は、
子供をつくるには異性のパートナーがいる。
「よし子供つくろう!」
という意思があれば、ポロッと子供つくれるという風なものではない。

それより
「デフレ解消のために日銀はリフレ政策をしろ!」
「日銀のデフレ政策が日本を滅ぼすんだ!」
とか、(実際は経済の勉強なんて大してしてなくても)声高に叫んでれば、言う方も聞く方も興奮する訳だ。

受けが悪ければ、当然あまり話題にのぼらなくなる。
「問題なのはわかってるよ」
けど決定的な対策はほとんどないし、話題にしても面白くない、周りでも誰も話してないという三拍子そろえば、
当然問題は過小評価されていく。
少子高齢化は実は問題ではない」なんていうカウンター的な主張の方がよほど受けがいい。
大体のパターンとしては、
左寄りの論者「移民を受け入れるべきなのに、閉鎖的な日本社会はまったく・・・」
右寄りの論者「女の社会進出がいかんのだ!」
で思考停止。
あなたはどっちですか?
(参考)
論理の方向性を左右するものは感情である

  • 少子高齢化問題の深刻さを理解すると日本の未来が見えてくる!(ただし夢も希望もない未来が)

そんな過小評価されている少子高齢化問題を正当に評価して、
まず「日本で現在進行している一番大きな問題である」ということをすっきり理解していただきたい。

前向きな方であれば、当然少子化対策を考えよう、ということになるし、
僕も学校の授業かなんかだったらそういう流れを組むんだろうけど、
まともな頭があれば少子化問題は解決不可能という結論に、否が応でも至るだろう。
政府が強制的に出産適齢期の男女を徴兵制みたいに徴収して、
ランダムに男女を組み合わせて無理くり結婚させて、子供二人産ませるような政策をとれば解決できるだろう。
今の世の中だとすごい非人道的に見えるけど、僕がジジイになるか、或いは死後くらいになって
少子化の影響が相当深刻になれば、そういう政策も議論されるかもしれない。
「強制出産制度」みたいな。

ちょっと先走ったが、人口ピラミッドを見て、日本の少子高齢化の進み具合を見よう。

人口ピラミッドも学校で散々見せられてるとは思うんだけど、
大半の教師の説明は熱がこもってなくて、
「はい少子高齢化やばいでーす。皆さんもっと危機感もちましょーう」
「はーい」
という扱われ方がほとんどで、かえって問題の過小評価につながっていると思う。
折角当ブログのような場末の穴蔵に来たのだから、一度頭を洗い流して、
新しいものを見る気持ちで、これを眺めて欲しい。

データソースはここ。
人口ピラミッドデータ
総務省統計局。

●1930年

浜口雄幸内閣の頃。
太平洋戦争への道を突き進んでいった頃。
後進国(今でこそ発展途上国という言葉を使うが)だった日本を象徴するような多産多死。
政府も出産奨励政策をとっていて、産めよ増やせよ、という風潮があった。
妊娠中絶に関する法規制も厳しかったしね。
●1950年

太平洋戦争を経て、20年前は200万人いた1930年時点での0歳児が160万人くらいになっている。
そして終戦から5年で、毎年240万人くらいの子が産まれている。
団塊の世代というやつだ。
(正確には47年〜49年を言うらしいが、その前後も結構多い)
戦争で盛大に殺し合った後というのは、やはりそういう気持ちになるのかね。
●1970年

そしてその20年後。
時代的には高度経済成長を達成して、「もはや戦後ではない」時期。
特筆すべきなのは、1930年→50年では200万人の新生児は二十歳になった時点で、
病死や戦争によって40万人くらいの減少があった。
新生児だけでなく、幅広い世代にわたって人口が減少している。
しかし50年代→70年代は、ほとんど各世代の人口が維持されている。
20年前に240万人だった世代は、ほとんどそのまま20歳上に推移している。
いかに日本人が死なないか、というのはこういう統計を見ると歴然としている。
僕の身近で家族・知り合いが死んだのは、二十年生きてきて、二人。
同級生の弟が、五歳くらいで風邪をこじらせて夭逝したのと、父方の祖父が死んだのだけ。

それだけ日本が豊かになった、ということではあるし、
「基本的にはいいこと」なんだけど、これが現代にまで及ぶ人口構成の歪みを生んでいる原因。

●1990年

71年〜74年産まれは団塊ジュニアというらしい。
この図の15〜20歳台の山がそれにあたる。
別に出生率が変化した訳でなくて、一世代240万人いやがった団塊の世代結婚適齢期に来て、
子供つくりはじめたために、統計上子供がたくさん産まれただけ。

●2010年

ほぼ「今」の人口構成。
団塊ジュニアの山を最後に、一貫して子供数は減り続けている。
80万人ちょいだからね。

なんで70年代を最後に、子供の数は減り続けているのに、日本の人口は減少に転じないのか、
というと、縦軸の上を見て欲しい。
平均寿命が伸びていて、それが子供の数の現象を補っている。

ここから政府による将来の予測値となっている。
あくまで予測なので、多少の違いはあるかもしれないが、
恐らく出生率の低迷は今後も上がることもなく、かといってこれ以上下がるのも難しいと思うので、
そんなに大きく回復したり、低下したりすることはないと思う。

●2030年

僕が1990年産まれなので、僕と同世代の方は40歳になった時。
(是非読者の方も、自分は何歳になってるか考えながら見るとちょっと面白いと思う)
年金制度やら社会保障制度やらが悲鳴をあげだす頃かと思われる。
今でも火の車とか言ってる人がいるけど、本当の地獄はこれからだ。。。(ガタガタ

●2050年

遂に新生児が40万人くらいになってるけど、
これは出生率が下がってる訳じゃなくて、出産適齢期になった世代の人口がもう大分減ってるから、
出生率が今から下がらずに、横ばいで推移してるとしても、子供の数は減ってゆく。
ちなみにこの計算を続けていくと、机の上では何百年後には日本人は消滅するんじゃないか、という恐ろしい計算結果が出てくる。


(合計特殊)出生率は詳細な定義はよく知らないのだけど、
直感的には一人の女が平均してどれだけの数の子を産むか、という数値。
どんなに男女平等が進んでも男は子供を産まないので、人口を維持するためには一人の女性が二人の子を産む必要がある。
もっともこれは単純計算で、ぴったり人口が維持できる数の子供を産んだとしても、
実際は病気やらなんやらで、子供はいくらか死んでしまうので、本当に維持したいのであれば、2.06くらい必要らしい。

いずれにせよ日本の1.37人という数字は論外だけれども。
1974年を最後に、二人台はなくなって、それ以降はずっと下降線をたどっている。
原因はここでは置いておくとして、ともかくそういう事実。

  • 人口減少について


田中康夫の「なんとなく、クリスタル」という小説をどのぐらいの人が読んでいて、
また覚えているかは疑問だけれど、この小説は右ページが頭空っぽの女子大生のバブリーな生活を描いた小説、
左ページがその注という形で書かれたトリッキーな構成の小説なんだけれど、
この最後の展開は、
テニサーのランニングしてるときに主人公の女子大生がすれ違った大人っぽい香水のかおり漂わせるミセスに、
私もなれるのかしら? と主人公が独白して、次のページに合計出生率だとか、人口予想とかの概要が載っていて、
「そんな明るい未来があるかたわけ」というオチになってる。
ちなみに1980年あたりの小説。
30年前くらいから、もう既に一部の人の間では、
少子高齢化は遠からず問題になるという予想はしていたわけね。

けれども問題は、少子高齢化は進んだのだけれど、
人口減少が起こらなかったこと。
上でもちらっと書いたけど、平均寿命の伸びが、少子化による人口減とトントンになってしまって、
むしろ日本人全体で見るとちょっと増えているくらいになっていた。

実はこれがまた少子高齢化を過小評価させる一因になっているだろう。
ただ人口は今(2010年)がピークで、実はもう減少に転じている。

しかし、人口減少、というと、
「いや今の日本の人口は多すぎるし、大体職にあぶれる人たちもいっぱいいるんだからむしろ人口は減ったほうがいいよ!」
という短絡的な発想に至る人がいる。
しかしこの人口減少の原因が、少子化による若年世代の減少が主な原因であることを見誤っている。
もし若年世代、老年世代が今の比率を保ったまま人口が減るのであれば、
それは確かにいいことと考えることもできる。

しかしこの人口減少は若年世代の減少によるものである。

つまり年齢階層別ではこうなる。

また、高齢化率については、

(ソースはこちら
2010年時点でほぼ日本人の4人に1人は高齢者という状況になっているけれど、
2050年にはこれが10人に4人になる。
国連推計ではもう少し低いが)

ここから生まれてくる論点はいっぱいあると思うけれど、
とりあえず今回の記事で少子高齢化が日本最大の問題であるという認識を抱いてくれれば幸甚である。