四十三庵

蔀の雑記帳

たったひとつのギリシャ問題解決案〜ユーロ共同債〜

欧州債務問題がまた盛り上がってきた。
・10月にギリシャ資金が底をつく見込み
・9月に予定されていた融資が中断している
というのが一番のネタ。

ギリシャという国は、経済規模自体はたいして大きい国ではない。
GDPが2,429億ユーロ(2008)だから、約28兆円(€1=¥120)くらい。
観光業が強いくらいで、他にめぼしい産業はなく、国自体も小さいので、まあ当然とも言える。
(東京の総生産が89兆7149億円なのと比べてみるとよい)
日本で言えば一つの県が財政破綻したくらいな話で、
確かに大変なことではあるけれど、世界中の株安が一気に進むようなネタではない。
しかし厄介なことに、ギリシャはユーロを使用している。

  • ユーロの抱える構造的問題

ユーロというのは、導入時から経済学者の連中からは批判にさらされてきた。
批判にさらされながらも、10年間以上流通してきたし、ドルに次ぐ第二の通貨としての地位を確立した。
2000年には最安値88.96円まで下落したけれど、
経済学者の不安も何のその、2008年には最高値169.96円まで上昇した。
経済学者の懸念とは何だったのか・・・
それはこういうことだった。

通常、政府は二つの手段を通じて国内経済を動かす。
・財政政策
・金融政策
の二つ。
日本であれば、バブル崩壊以降、景気後退とデフレが続いている。
そのため、国債を発行しまくって、公共事業をやって、たくさんの無駄な道路や橋を建てた。
これが財政政策だ。
一方、日銀はゼロ金利政策量的緩和政策という二つの金融政策で、景気刺激をはかった。
結果としては「失われた二十年」だったけれども、
もしここで財政政策も金融政策もやらなければ、経済の落ち込みは更に深刻になっただろう。
政策が適切だったかどうかはともかくとして、「やらないよりはマシ」であったのは確かだ。

一方日本と違って、中国は好景気が続いている。
中国の悩みはむしろインフレだ。
そこで中央銀行の金融政策も、日本とは真逆の政策をとっている。
金利を上げて、好景気を維持したまま、何とか物価を抑えようというのが目的となる。

ここでもし、日本と中国が同じ貨幣を使って、同じ中央銀行の国だったら、どうすればいいのだろうか。
「日本中国銀行」は利上げすべきなのか、ゼロ金利政策を続けるべきなのか。
想像しただけで悩ましいね。
実際は恐らく中国と日本の折衷案のようなものになると思われる。
中国人民銀行金利が10%で、日本銀行が0%なら、日本中国銀行は5%くらいにせざるをえない。
そうなると、日本は景気後退が深刻になって、更にデフレが進む。
中国は多分物価がはねあがって、好景気はどこかでバブルをうんで、数年後派手にはじける。

ヨーロッパの話に戻そう。
ユーロ導入の最大の問題は、実質的な金融政策の放棄であった。

当たり前だが、ユーロを導入したからって、ユーロ圏の国々の景気が同じように動いたり、
物価が同じように動いたり、ということはありえない。

物価変動率も景気変動も全然違う国々が、一つの通貨、一つの中央銀行を持つ。
そうなるとさっきの「日本中国銀行」のようなものになる。

10年間やってきて、大きな問題が起こらなかったのは、幸運だったとしか言いようがない。
ただ幸運というだけでなく、一応論理的な説明もできる。
ユーロ導入のためには、こんな基準を満たしていなければならない。
(出典)

① 財 政 財政赤字GDP比3%以下、債務残高がGDP比60%以下であること
② 物 価 過去1年間、消費者物価上昇率が、消費者物価上昇率の最も低い3ヶ国の平均値を1.5%より多く上回らないこと
③ 為 替 2年間、独自に切り下げを行なわず、欧州通貨制度の為替相場メカニズムの通常変動幅を尊重すること
④ 金 利 過去1年間、長期金利が消費者物価上昇率の最も低い3ヶ国の平均値を2%より多く上回らないこと

言うまでもないが、日本が仮にヨーロッパにいたとしてもユーロには入れない。
ギリシャはこの基準を粉飾会計などでごまかして入ったという話をきいたけど、まあでも大半の国は守ってると思われる。
少なくとも導入時点ではこの基準を満たしている、経済的に安定した国々がユーロを使っていた。
そのため構造的問題を抱えながらも、10年間という割と長い期間、価値を保ってきた。

ところがところが10年間の間に、ギリシャを筆頭に、ユーロ使用国の経済状況は大きく変わった。
リーマン・ショックの発生で、ヨーロッパ内の南北問題はいよいよ深刻になった。
ドイツ、フランスなどの大国は比較的安定しているけれど、南欧の国々は財政破綻寸前まで追い込まれた。
それがPIIGS問題。

もう一度この模式図を見よう。
仮にA国がドイツ、B国がフランス、C国が南欧諸国としよう。
A、Bは経済が堅調で、国債による資金調達も何ら問題なく行える。
C国は信用不安から、国債の利子率が高騰している。
本当は景気後退も深刻で、景気刺激策を打ち出したいのに、何もできなくなってしまう。
実質的にC国は財政政策も金融政策も封じられてしまう。
国債償還すら危うくなる。
C国に残された道は、デフォルトを宣言するか、ユーロを抜けるか。
ユーロを抜ければ、また自国の都合で通貨を増やしたり減らしたりできるので、
ギリシャちゃんも最悪ドラグマ乱発して、それで国債を償還できる。
ハイパーインフレになるだろうけど、デフォルトも同じくらい混乱する)

(↑ギリシャのユーロ導入前の通貨ドラグマ。なんか白目剥いてて怖い)
ただユーロ離脱をやられると、一気にユーロという通貨の信用力は落ちる。
だから必死にドイツもフランスもギリシャに融資しまくって、延命措置をしている。
ただいくら融資しても、ギリシャ経済の復活は5年以内は無理だと思われる。
(元々経済的にはそんなにいい国ではない)
デフォルトは不可避で、問題は「どうやってできるだけその衝撃を和らげるか」ということになっている。

市場もそういう風に見ているから、二年債を買う奴はほとんどいない。
「二年もたない」と思ってるからだ。
ユーロは現在105円台。一昨日は103円まで値を落として、底はちょっと見えない。

  • 解決策はあるか?

このブログの主要記事を読んでもらえばわかるけど、
大体の問題に対して僕は「色々解決策言われてるけど、どうしようもねーよ諦めろ」という結論に至ることが多い。
ギリシャ問題もそれに近い。
ギリシャ財政破綻させない方法はない。
ドイツとフランスがいつ諦めるか、という話。
政治家の方々は口が裂けてもそんなことは言えないだろうが。

ただ前向きで、割と現実的な解決策が1つだけある。
それがユーロ共同債だ。
(やっとここまで話が進んだ・・・)
ユーロ加盟国全体で債券を保障するのであれば、今回のような信用危機は回避できる。
ギリシャ国債保有者は、ユーロ共同債にシフトさせるような形にすればよい。
それならばデフォルトしても問題はない。

ただね、ドイツとか、ユーロ圏の大国に何のメリットもないんだよねこれ。
当然ドイツは反対している。
ギリシャのデフォルトをソフトランディングさせるためには、これしか道は残っていない。
9月中にドイツが折れなければ、10月にリーマン・ショック並の大混乱が起きるのは必定。
今のところ僕は「なんだかんだでドイツが折れる」か「ユーロショック」が5:5くらいだと思ってて、
ユーロのショートポディションを持っとるんだけど、なかなか為替相場も膠着している。
鍵を握るのはドイツがどういう選択をとるか。

(↑胸を露出することで男性有権者へアピールする(嘘)メルケル女史。顔を隠せば十分使える・・・?)

このままデフォルトになれば大儲けできるんだけど、
そういえば僕今年から就活だから、今デフォルトされると割とまずいんだった。

(参考)
ユーロ圏共同債とは
憲法改正がネック。

欧州債務危機解決が大恐慌引き起こす恐れ=ソロス氏

1)弱小国家の銀行破たんを防ぐため、銀行預金を保護する必要がある、2)デフォルトした国の経済を支えるため、一部の銀行の機能を維持する必要がある、3)欧州の銀行システムの資本再編を実施し、国家でなく「欧州」の監督下に置く、4)赤字を抱えた他の国の政府債を保護する必要がある──とする4つの大胆な政策措置を提言。「それらはすべてコストがかかるが、課税権限を持ち、借り入れもできる『欧州財務省』を創設する以外に選択肢はない」と述べた。

ラディカルで実行不可能なことを強硬に主張してれば、僕もそのうちニュースに出れるんですかね?_?

(関連)
ギリシャ、デフォルト待ったなし
5年以内にデフォルトする確率98%。