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四十三庵

蔀の雑記帳

「年金が資産運用で目減りしている」という神話

我々日本国民の年金を扱っている機構が、資産運用を行なっているのはご存知だろう。
そしてこの資産運用で出した損害が、たびたびTVタックルだとか新聞だとかで問題になる。
「年金運用、何千億円の損失!」
という見出しが出ると結構センセーショナルに扱われる。
ちなみに2011年4月〜6月の年金機構の運用成績は「マイナス3兆7326億円」である。
新聞の見出し風に書けば、

年金運用、第2四半期の損失3兆7326億円

という感じ。
多分、こんな感じの見出しを一度くらい見たことがあるだろう。

  • 実はきっちり利益出してる年金運用

しかし資産運用というのはどんな天才投資家でも365日利益を出すなんてことはできない。
たまにFXのアフィブログで、毎日+いくらっていう報告してるサイトがあるけど、99%嘘。

特にファンド機関投資家のように、運用する金額が桁違いに大きくなって、
しかもそれが他人の金で、ある程度情報公開する義務があるとなれば、運用方法は手堅くならざるをえない。
ファイナンス理論の専門家たちを集めて、きっちりリスクを抑えた投資をやってるのだろう。
手堅い運用をしていると、むしろリーマンショックや3・11のような、暴落相場ではきっちり損失を出すことになる。
それでも平常時にはコンスタントに利益を出して、トータルで見ればきちんと銀行預金の利子率以上には資産を殖やす。
運用成績もきっちり公開されているので、転載しよう。

年度→ 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 通期
収益額(兆円) -0.6 -2.5 4.9 2.6 9.0 3.9 -5.5 -9.3 9.2 -0.3 11.4
収益率(%) -1.80 -5.36 8.40 3.39 9.88 3.70 -4.59 -7.57 7.91 -0.25 1.20


出典
平成13年(2001年)からはじまった年金運用は、22年までに累計で11.4兆円資産を殖やしている。
運用資金は大体100兆円前後なので、まあ立派だと思う。
年平均にすると、1.2%の収益率ということになる。
けして資産運用に失敗して年金が目減りしているなどという事実はない。

年率1.2%の収益率が高いと思うか、低いと思うかは人それぞれだろうけど、
安全資産である国債の利回りが1%で推移していることを考えれば、
何度も繰り返すが、「手堅い運用」ということなんだろう。

年金を運用している団体は「年金積立金管理運用独立行政法人」と言うらしい。
Government Pension Investment Fundの頭文字をとってGPIFと呼んで欲しそうな感じ(呼ばないけど)。

  • どんな運用してんの?

「手堅い運用」と書いたけども、実際のポートフォリオを見ると、いかに手堅いかが感じられる。
・平成23年度第2四半期運用状況

半分以上国内債券*1で運用している。
だからまあ国債暴落でもない限り、年金の運用はトータルプラスを保ち続けるんでないかな。

「日本が200%超の累計債務を返済するためにハイパーインフレ起こして、国債の価値を暴落させる」可能性を主張したり、
あるいは「日本政府はそうすべきだ」と主張したりする人が一部いるけど、
年金の運用がこういう形で行われている以上、そういう手段を政府はとらない/とれない。

基本的には「年金積立なんちゃら法人」は、市場平均収益率を(わずかながら)上回る成績をあげているので、
そんなに批判されるような資産運用だとは思えない。
(もちろん市場平均を下回っている所もあるけど)

第2四半期について割と詳細に情報公開してるけど、
面白いのは国内債券だけが収益率プラスを保ってるっていう点だなあ。

・市場平均収益率(ベンチマーク収益率)
国内債券1.06%
国内株式-9.44%
国債券-4%
外国株式-21.31%

  • 1%の収益しか出せないのに資産運用のプロを名乗るな?

「もっと増やせるだろオラ」と思う人もいるかもしれないけど、
まあ年金運用だし、手堅くやるのが普通なんじゃないかと僕は思う。
年金運用機構がオリンパス事件で大量に空売りしかけて、十分に下がりきった所で買い入れて、
リバウンドしたらまた売って……みたいなゴールドマン・サックスばりのえげつない運用するのもアレじゃないっすか。ねえ。

  • なぜ年金運用機関はこんなにも責められるのか

基本的にマスコミは膨大な情報の中から、重要度の高いものから報道している。
「年金運用機構が×兆の損失!」
という情報ならば、ニュースにしなければいけないが、額が同じでも、収益をあげてたら、
「まあいいか」
と報道しない場合が多い。
残念ながらマスメディアはこういうことが起こりやすい。
いいことをしてもシカトだが、悪いことをするとこれでもかと報道する。

更に情報の受け手側も、
「年金運用機構が損失を出した!」
という記事・ニュースはショッキングで、印象に残りやすいけれど、収益をあげていれば、
「当然だろうオラ。それよりホントに俺年金もらえんのかよオラオラ」
と、あまり印象に残らずに流してしまう。
結果残るのは損失のニュースだけで、年金運用機構=損失を出す機関という固定観念が形成される。
心理学的なカッコいい用語で言うと、認知バイアスというやつだ。

*1:もちろん国債だけじゃなくて社債なども含まれるのだろう