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四十三庵

蔀の雑記帳

一円にもならないことをやる人を集めて一億稼ぐ方法

  • 金では買えないモノ

経済学部に入ってから世の中が利潤動機で動いてるということをあまりに当然のように受け入れすぎて、
金にならないことに情熱を燃やす人々の心が素で理解できなくなっています。
それはそれで人として問題があるとは思うのですが……

けど世の中一円にもならないことに情熱を燃やす人は結構いまして、そういう人間が集っているのがニコニコ動画です。
初音ミクなどのVOCALOID職人とか、「歌ってみた」とか、ニコ生の放送主とか、ニコ動行けば山ほどそういう暇人がいます。
才能の無駄遣い」をしている訳です。
彼らはどっちかっていうと金をもらうどころか、ニコ生主なんかは金を払っていて、
彼らは「金と時間」というコストを払ってまで、ニコ動で動画配信しています。
利潤動機で動くのが自然な状態だと考えている僕のような人種にとっては「頭おかしいんじゃないか」と思ってしまいますが、
もちろん彼らにも見返りがある訳です。
動画配信すると、コメントがついたり、視聴者数が表示されたりするんで、それを通して
承認欲求や自己顕示欲が満たせたり、現実で
は友達づくりが困難な人間であってもニコ動を通じてコミュニケーションがとれたり、
「お金で買えないモノ」を得られる訳です。
もっと言うと、99%以上の人間が、子供の頃は世間をあっと言わせるようなすげー存在になるんだという根拠のない自信を抱きながら、
ドラマの主人公になるんだと思いながら、
実際は社会の歯車になって、ドラマのエキストラ程度の役割しか果たさずに年老いていくのですが、
「ニコ動で話題になる」ということは、そんな非情な運命に抗う一つの手段になっているのです。

ニコ動は機能的・知名度的には完全にYoutubeに食われてて、
純粋な動画サイトとしての機能を考えたら、明らかにYoutubeに負けているんですが、それでも恐らくニコ動はなくならないでしょう。

  • ニコ動へのアクセス

ニコ動は「一円にもならないこと」をやる人々に、プラットホームを提供しています。
もっともそのプラットホームは、新宿LOFTや武道館のように現実の場所を提供する訳でなく、あくまでヴァーチャルな場。
「現実に存在しない」というと、ネガティブな響きを持つんですが、
「現実に存在する」場というのは、実際の所都市部から離れた人々を当然のように排除しているのですが、
「現実に存在しない」ニコ動は、北海道から沖縄まで、ネット環境さえあればアクセス可能です。

  • ニコ動の収益性

ネット上のプラットホーム構築は、ネットが普及するにつれて、
夢のように叫ばれてきたのですが、ニコ動が出来るまで、日本ではなかなかそういう場ができませんでした。
データ通信量の制約が一番きつかったんでしょうが、それと同じくらい「収益性がない」こともきつかったでしょう。
たとえば東京ドームでライブやります、というときにどうやって運営費を賄えばいいかと言えば、
シミズオクトの時給1000円行かないくらいのバイト雇って、入口でチケットをチェックさせるだけでいい。
ネット上のライブだとそうもいかない。
「プレミアム会員限定視聴」とか「会員限定サービス」とか、
プログラム組めばできるようだけど、あまりリアルでのライブほどの収益性があがらない。
どうも「ネット上のものはタダが当たり前」で、「ネット上のものに金を払うのは癪だ」という感覚が、未だ我々には根強いらしい。
実際の所、サーバー管理にも金がかかるし、プログラム書かせるのだって金がかかって、
「ネットでやってるから費用ゼロ」ということはありえないと思うのだけど。

そんな感覚も手伝ってか、ニコ動は長らく赤字ビジネスだった。
経営的には、ニコ動というのは、「ニワンゴ」という会社が運営している動画サイトで、
この「ニワンゴ」は「ドワンゴ」という会社の子会社だ。

ドワンゴ→(子会社)→ニワンゴ→(運営)→ニコニコ動画

ドワンゴという会社はCMでたまに「着うた」の宣伝をしていることからも分かる通り、
別にニコ動だけで食ってる会社じゃなくて、ネットワーク事業を手広くやってる会社だ。
ドワンゴにとって、ニコ動は長らく「お荷物」だった。

2008から2009年頃は赤字を垂れ流し続けていた。
しかし2010年を境に、一気にニコ動は黒字化した。
2011年の第四四半期(ややこしい表現ですが)には、3億1300万円の営業利益を叩き出しています。
要因は細かいことをあげれば色々あるだろうが、一番効いてるのが「プレミアム会員数の増加」だろう。

2011年9月には139万人のプレミアム会員がいるらしい。
これだけいれば525円/月の料金でも、なかなか馬鹿にならない金額が入っています。
これこそネットの強みでしょう。

僕の友人にもニコ動のプレミアム会員がいて、
「え? まだお前プレミアム会員じゃないの?」
みたいなことを言ってきたので、これから付き合い方を変えようと思っていますが、
こうやって統計を見るとやっぱ着実に増えてるんだなあとあらためて思います。

僕が一番ニコ動を利用するのが、楽天戦の生中継なんですが、追い出される*1ことが結構多くなって来ました。
それもやはりプレミアム会員数の増加で説明できるし、
「こんだけストレス溜まるんだから、月500円くらい払うか……」
という心理が働くのでしょう。


この辺はまあ載せるだけ。

  • 「なぜ日本からジョブズがあらわれないんだ!」

Appleスティーブ・ジョブズが死んでから、案の定神格化されて、
「なぜ日本からジョブズがあらわれないのか」というのを十回ぐらいきいたような気がしますが、
ニコ動なんかはこうやってつらつら考えていくと、ジョブズ並とは言わないまでも、
「まあまあの」先駆性はあると思うんですが、全然Appleみたいに扱われないのは、
IT業界よりも「評価する側」に問題があるのではないかと思わないでもないです。

ジョブズも普通に日本人で、「林檎株式会社の捨船承太郎社長」みたいな感じで、
同じことやってたら、これほど評価されなかっただろうし、人間性がもっと問題視されたような気がします。

そんなところで。

(画像出典)
2011年9月期 決算説明会 株式会社ドワンゴ

*1:無料会員はプレミアム会員の視聴者数が多くなってくると視聴制限がかかって、動画が見れなくなる