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四十三庵

蔀の雑記帳

ミクロ経済学でわかる東電を国有化すべき理由

仕事 経済

東京電力は去年に続いて、今年度も新卒採用はゼロで、
インフラ志望者どもは涙でリクルートスーツを濡らしていた。
そんな東電だけども、国有化される流れが確定的になってるくさい。

「国有東電」苦難の再生 監督・経営、一体に危うさ
国が東京電力の議決権の過半を握ることが固まった。だが、外部から登用する会長人事の混迷が示したように、国有化された東電の先行きはきわめて不透明だ。電力の安定供給や原子力発電所事故の賠償、電気料金の引き上げ、原発再稼働といった一筋縄ではいかない課題が目白押し。国有化は問題解決の出口ではなく、入り口にすぎない。
区)
■最後の抵抗失敗
 今月半ば、民主党仙谷由人政調会長代行と向き合った東電勝俣恒久会長は最後の抵抗を試みた。

 政府が過半の議決権を握るのはやむを得ない。自分は退き下河辺和彦氏の会長就任も受け入れる。その代わり、自らが昨年登用した西沢俊夫社長の続投だけは認めてほしい――。強く迫ったが、答えはつれなく「ノー」。粘り腰が身上の勝俣会長も、政府に生殺与奪の権を握られている以上、抗するすべはなかった。

 日本の電力供給は戦後のごく早い時期から民間電力会社が地域割りで市場を寡占する独自の形態を続けてきた。東電を長男格とする各電力会社はそれぞれの地域で強い影響力を持ち、ときにその力は監督官庁である経済産業省を圧倒するほどだった。

 だが、今の東電に昔の面影はない。福島原発の賠償負担などが膨れあがり、本来ならいつ倒れてもおかしくない。それでも存続しているのは、政府が資金供給を続けているからだ。

 石油会社やガス会社、大手商社の幹部が日参する雑居ビルが東京・虎ノ門にある。訪ねる先は原子力損害賠償支援機構東電と共同で総合特別事業計画を策定した同機構は東電の「第2本社」というべき存在だ。

 機構幹部は「東電にはカネがない。東京湾岸の同社の老朽火力発電所を新鋭化する際は、外部企業の出資を仰ぐ」と明言。その言葉に吸い寄せられるように電力市場参入を狙う企業が次々に機構のドアをたたく。今の東電は設備更新一つとっても、官の意向に従わざるを得ない。機構の存在感の高まりは、東電の経営がいかに独立性を失っているかの裏返しである。

だが、事態の主導権を握っているようにみえる機構や、さらには政府にも、国有化された後の東電の経営のあり方や電力システム改革の明確な青写真が描けているわけではない。

 これまで電力制度は電力会社という民を経産省などの官が規制・監視するという枠組みだった。ところが、今度は東電自身が国有化企業という「官」になる。電気料金の引き上げや原発の安全性を厳しくチェックする政府が、一方で東電の収益拡大を優先する立場の大株主になる。規制体制のあり方を見直さなければ、「自分で自分を監督する」という深刻な統治の不在に陥りかねない。

 今回の計画に盛り込まれた資金支援や合理化だけで、東電事業体としてしっかり独り立ちできるかは不透明だ。電力問題に詳しい経済人の一人は「今回の措置は東電の破綻を避けるための先送り策。抜本的な解決にはほど遠い」とみる。

■枠組み見直しも

 国有化の狙いは2つ。一つは経済の血液でもある電力を適切な料金で安定的に供給すること。もう一つは原発事故に関する賠償や除染廃炉の着実な実行だ。

 安定供給には一定の料金上げが避けられず、その上げ幅を抑えるためには、安全性を確認した上での原発再稼働が不可欠だろう。だが、その覚悟が政治にどこまであるのか。夏が来るたびに電力不足が懸念されるようでは、産業の空洞化が加速する。

 賠償などの費用も最終的にどこまで膨らむかわからない。原賠機構による支援金を東電が利益の中から返済していく仕組みが持続可能か見通すのは難しい。

 「制度面での追加的措置の可否について検討する」。関係者によると総合計画には、こんな表現が盛り込まれた。東電支援の枠組みを将来、見直すこともあり得るという一項が、国有東電の多難な前途を示している。

具体的にどうやって国有化するかっつーと、別の記事によると

政府は東京電力が新たに発行する株式を購入し、議決権の50%超を握る。東電の場合は政府が2003年に約2兆円を資本注入して実質国有化したりそな銀行に近い。

ということらしい。
これが株価に対してポジティブに働くか、ネガティブに働くかはなんとも言えないが、
りそなの例ではポジティブに受け取られて*1
株価は2003年5月の470円から、2005年12月には4990円まで上昇した。*2

個人的には東電株は長期投資(一年以上)で持てるのであれば、買いだと思ってる。
この流れだと、国有化されても上場廃止とはならないんじゃないかな。
切実な問題として、資金調達が苦しいだろうから、
上場廃止して全額公的資金投入っていう流れにはならんでしょう。

一部の革新派の人々は、電力自由化に踏み切るべきだと言っておりますが、現実問題それは難しい。
というのは電力事業というのは発電所・電線など莫大な固定資本が必要で、新規参入するには莫大な資金が要る。
それだけで相当な参入障壁だけど、それに加えて、
東電以外の電力会社」ができても社会的なメリットはそこまでない、というのも痛い。
電力なんかは「自然独占」が起こる産業なので、結局新規参入が起こって、東電 vs A電力 vs B電力のように、
いろんな電力会社が併存したとしても、結局は一社に収斂するだろうし、
何個も電力会社があって、東電の送電設備とA電力の送電設備が併存するっていうのも、社会的には非効率的だ。
(電柱が同じ道にニ、三本並んでるのを想像して欲しい)

現実的にはエネファーム(家庭用燃料電池)使うとか、
各家庭に太陽光パネルつけるとか、そういう選択肢ぐらいはあるんだろうけど。
電力会社の発電と比べれば、微々たるもので。

いずれにせよ、電力自由化は結構難しい。

  • 民営化すれば効率的になるという神話

僕は東電国有化推進派である。
レーガンサッチャー辺りの新自由主義の流れで、
日本も遅ればせながら民営化万歳みたいな空気になって、郵政民営化が異常な熱狂で可決されたりした。

民営化推進派の理屈は、民営化すれば、市場原理が働いて、
「お役所体質」の組織よりも、効率的な経営が実現するから、民営化すべきだと。
「経済学の初歩だろこんなの!」と叫ぶのだけど、残念ながらそういう方々は、
大抵ミクロ・マクロの初等的な教科書をナナメ読みしたくらいで終わってて、
「完全競争市場は効率的な資源配分を実現する」ぐらいでとまってるのだと思われる。
市場に余計な介入をしなければ、「神の見えざる手」が需要と供給を一致させて、均衡価格と均衡数量が決定して……

しかし現実的には、完全競争市場というのはほとんど存在しない。
特に電気事業は、東電を見ても分かる通り、仮に民営化したとしても、新規参入はほとんど起こらず、競争もクソもない。
この手の独占企業の行動には、実は完全競争市場のあの需要曲線と供給曲線の交点が……というモデルは適用できない。

↑これは東電には適用できない

完全競争状態の企業は、価格を限界費用に等しくなるまで引き下げる。
けど独占企業の場合、自分が一番儲かるように価格設定が考えられる。
価格決定力がないか、あるかの差である。
独占企業の場合、完全競争状態の企業とは、そもそも利潤最大化の条件が異なる。
(数式がわからない場合はシカト可)

じゃあどういう式になるかというと
需要関数x=D(p)の逆関数をとってやって、p=F(x)という式を考える。
独占企業の収入は

R(x)=x×F(x)

とあらわせる。*3

で、独占企業の費用関数をC(x)とあらわせば、独占企業の利潤はπは

π=R(x)-C(x)

とあらわせる。
利潤最大化の条件がπ'=0なんで、

R'(x)=C'(x)

限界収入と限界費用が一致する供給量xを独占企業は選択する。
これが正しいミクロ経済学の独占企業行動の利潤最大化である。

で、問題はこの条件で利潤最大化行うとどうなるかという話なんだけど、
結論は「完全競争状態よりも高い価格、少ない供給量」ということになる。

この図を使って説明すると、完全競争であれば、需要曲線Dと限界コストMCとの交点が均衡点となる。
しかし独占企業は、自分が一番儲かる価格設定が可能なので、
限界コストMCと限界収入MRの交点が均衡点となってしまう。
実際消費者に売りさばくときは、需要曲線上の「市場全体の供給量」と書いてある数量に対応する価格で売りさばく。
ここが一番企業にとって儲かる。

現実と対応させて考えてみる。
東電の場合、供給量はまあ一応それなりにやっているが、電気料金は確かに高い。
供給量を減らしたケースとしては、アメリカになるが、
エンロンという会社がカリフォルニアで起こした電力危機が代表的だ。
カリフォルニア州は96年から電力自由化を行ったけれども、うまく行かなかった。
電力価格引き上げには消費者の根強い反発があったため、
電力会社は「売り渋り」「輪番停電」などの供給量を減らす方法で対応した。

独占企業を民営化しても、あんま効率的にならない好例だろう。

  • まとめ

調べてみると、東電日本発送電という、
特殊法人が母体になって、戦後民主化の流れにのって1951年に設立されたらしい。
確かに公務員の仕事というのはクソだけども、インフラ系の事業というのは、
民営化したからといって効率的になる訳ではないのは、理論的にも立証されている。
多少非効率的であっても、国有化して、国民がチェック*4しながら、電力ガス運営してく方がいいと思うんですよね。

まあ、だから、東電も国有化した方がいいと思うよ。うん。

*1:2000年前半の金融が強かったこともあるだろうが

*2:尤もそのあとリーマンショック+経営不振で現在は300円台まで落ち込んでいる

*3:雑な説明だ

*4: