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四十三庵

蔀の雑記帳

あなたの文章は数字を使うと驚くほど読まれなくなる

論考

よくデータに基づいて議論しろ、という風に巷では言われている。
当ブログも結構数字は使っている。
テーマにもよるが、特に経済やビジネスの話であれば、数字が出てこない議論はあまり意味がない。

ところが、議論の中心に統計データを据えた文章というのは、驚くほど読まれない。
今までブログ書いてきた実感として、正確に議論しようとすればするほど、読まれなくなっていく。
見せ方もあるんだろうけど、基本的には数字が入ってる記事は人気がない。
表を使うか、グラフを使うかでも違うが、正直言ってあんまかわらない。
できるだけ単純化したグラフを使うと、数字が入っててもさほど苦にならずに読めるが、
しかし正確性という点ではレベルが落ちてしまう。

  • なぜ数字入れると読みづらいか

なんで数字入った文章が読まれないかっていえば、単純に読みづらいからである。
文章を「読む」作業と、数字を理解する作業は、使う脳の部位が違うのではないだろうか。
「たかしくんはおつかいに行って近所の商店街に行った。
肉屋のおじさんはたかしくんが子供なのをいいことに、豚肉を高い値段で売りつけた。」
という文章であれば、さほど難しくないが、
「身長135㎝、体重45キロの小学3年生のたかしくんが、
おつかいに行くために自宅から商店街まで500メートルの道のりを5分かけて歩いた。
今年51歳の肉屋のおじさんは300gの豚肉を、本来532円で売っているのにもかかわらず、
724円(これは本来500gの豚肉の値段である)で売りつけた」
などと書くと、とたんに読みづらくなる。

もっと読みづらくするには、数式を入れるとサイコーだ。
簡単な四則演算であっても、ちょっと数式が入ってるだけで読みづらさは格段にアップする。
況や、それがこまっしゃくれた計算だったりすると、読み手の思考はその時点で停止して、
「あ、ここの論点はテキトーに読み流そう」という思考になる。

以上の関係を図示すると、こんなかんじになる。

数字を使うと、その時点で文字だけの文章よりも読者は減る。
でもグラフや表を載っけるだけならまだマシで、文中に数式展開とかしちゃうような類の文章は、更に敬遠される。
数学でも位相空間とか高度なモノが使われていると、単純に数学知識の問題でドロップアウトする読者が出てくるのはもちろん、
簡単な足し算引き算であっても、文中に出てくると大分流れが悪くなる。

  • 経済系物書きのジレンマ

片岡剛士というエコノミストの書いた新書を最近読んだ。
「円のゆくえを問いなおす」という本で、データを適切に用いた、良著である。
しかし恐らくはこの本よりも、浜矩子とか三橋貴明とかの、クソみたいな経済本の方が売れるだろう。
それは浜矩子がほとんど統計データ使わないで、文章書いてるから、というだけの理由だ。

経済系の本というのは、常にそういうジレンマに陥っている。
誠実に書こうとすれば数字を援用せざるをえなくて、そうなると読者がついてこない。
読者がついてくるように語るとするならば、不誠実な議論になる。

まあなにが言いたいかというと、片岡剛士さんの本がもうちょい読まれるといいな、と。
そう思うわけです僕は。