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四十三庵

蔀の雑記帳

発展途上国の低賃金労働

新興国、高まる労務リスク 格差拡大で争議多発
好調日本企業、標的に
2012/7/22 2:00
スズキのインド子会社、マルチ・スズキの自動車工場で18日夜に発生した暴動は、日本企業が進出を急ぐ新興国での労務リスクを改めて浮き彫りにした。急速な経済成長を遂げるインドや中国などでは貧富の格差が広がり、賃上げを求める争議が多発している。現地で成功している日本企業ほど標的にされやすく、新たな対応が必要だ。

 暴動が起きたのはスズキのマネサール工場(ハリヤナ州)。スズキによると18日朝、あるインド人従業員が班長から注意を受け、暴力を振るったのが発端だ。

■来月再開めざす

 工場の人事部が決めた停職処分の撤回を労組が要求。話し合いが続く中、一部の従業員が暴徒化。事務所などが放火されインド人の人事部長が死亡、約100人が負傷した。共産党系組織が計画的に扇動したとの見方もある。警察が調査中だ。

 年産能力65万台のマネサール工場の再開時期について、マルチ・スズキの中西真三社長は21日、「1カ月もかけるわけにはいかない」と述べ、8月の操業を目指す考えを明らかにした。

 今や労働争議は「どの新興国でも起きており、減ることはない」(東京海上日動リスクコンサルティングの青島健二氏)。ベトナムでは2011年に過去最高の978件のストライキが発生。今年6月には、福利厚生が手厚いことで知られるキヤノンのプリンター工場で賃上げストが起きた。

 自動車や二輪車の9割超を日本ブランドが占めるインドネシアでも、日本企業に矛先が向きやすい。10日には日本大使館前で100人を超える規模のデモが発生。日系工場に部品を納めるメーカーで解雇された社員の復職を訴えた。

 アジアなど20カ国・地域に進出する日系企業を対象に日本貿易振興機構ジェトロ)が実施した調査(11年、3904社が回答)によると、経営課題として1位に挙がったのは「従業員の賃金上昇」(68.8%)で、前年比8.3ポイント増えた。

■朝礼めぐり摩擦

 ジェトロ海外調査部の若松勇課長は「アジアは労働力が豊富という印象があるが、状況は変わりつつある」と指摘する。工場進出が相次ぐ地域では労働力が不足し、組合は強気の要求を掲げて譲らない。

 文化の違いが摩擦を生む場合もある。中国のある日系企業では、20分間の朝礼を労働時間と認めない会社側に労働者が反発、争議に発展した。

 新興国の企業戦略に詳しい富士通総研の金堅敏主席研究員は「成果重視の欧米企業に比べ、プロセス重視の日本企業は従業員にとって評価の仕組みや責任の所在がわかりづらい」と話す。労使間で信頼関係を築き、不満の芽を早期に摘み取るなどの対応がこれまで以上に求められている。

以前僕はこのような記事を書いた。

チャイナリスクは発展途上国リスクである

2010年11月の記事なので、約1年半前ということになる。
製造業が工場を海外移転しているのは経営的視点から見れば当然の話で、
この円高で自動車産業がわりと死んでないのも現地生産の恩恵だろう。

日本企業が発展途上国現地生産する、一番のインセンティブは物価の差である。
物価は賃金、為替と密接な因果関係を持っている。
物価水準が相対的に安い国は、名目賃金も安い。
更に物価水準がやすいと、為替レートも安くなる。(購買力平価説
日本からの輸送費・ランニングコストを考えても、十分に物価が安ければ採算が合う。

物価水準→賃金・為替

たとえば、2001年のアレだから、今はもうちょい上がってるんだろうけども、
タイの物価水準はこんなもんである。
タイ物価表
1バーツ=2.8円 (2001年9月現在)だったそうだが、

バス 3.5 バーツ(エアコンなし)/10バーツ(エアコン付き) 200円
新卒の1ヶ月の給料 10000バーツ 200000円

日本だと200円かかったバス運賃が、タイだとエアコン有りでも10バーツ。
日本円で約28円である。
物価が安ければ、(当たり前だけども)商品の値段が安い。
日常生活を送っても、生活費はそんなにかからない。
だから新卒の社会人の給料が10000バーツ、日本円で28000円であっても、十分生活できる。

日本で100人の工場労働者を雇えば、一ヶ月2000万円かかる。一年で2億4千万円。
タイの工場であれば、一年たったの3360万円。
ざっと2億円は浮く計算になる。
この金でタイへの輸送費やランニングコストを賄えば、十分お釣りが来るし、何より製品価格を安く抑えられる。

  • 賃金格差は「搾取」か?

よくこの手の先進国労働者と途上国労働者の賃金格差を、左寄りの論者は、
資本主義の「弱者の搾取」という風に非難する。
しかしこの点においては、ポール・クルーグマンがいい反論をしている。

発展途上国に、もし先進国の工場がすべてなくなったらどうなるか?
先進国の搾取から開放されて途上国は豊かになるのか?
というと、ならない。
ただ今以上に働く場がなくなるだけである。
本当に「搾取」なのであれば、そもそも発展途上国の国民は工場で働かなくてもいいはずだ。
彼らが工場で働くのは、現地の農林水産業や手工業に比べたら、工場の賃金はそれよりもまだ高いからだ。

この理屈に感情的に納得がいかない人もいるかもしれないが、一応これが途上国と先進国の賃金格差が、
先進国の搾取ではない、というロジックになる。

  • これからの途上国を考えよう

さて、今まで海外投資といったら、インドや中国だった。
しかしもう事情は変わってきている。
現地の労働者の教育水準が上がってきて、日本人のただ椅子に座ってるだけの監督者は年間600万円とかもらってて、
自分たちは年収33万くらいしかもらえていない。
そのことに現地人が気づき始めてしまったら、冒頭に引用したような暴動を起こすのも無理はないだろう。

どう考えてもこの賃金格差は維持できない。
途上国の経済成長が続く限り、恒常的に物価は上昇し続ける。
賃金も上がり続ける。
人件費が削れなくなれば、商品価格に上乗せせざるを得ない。
世界的な価格競争に日本は乗れなくなる。
まあやっぱそう考えると、先進国の製造業はブランド路線に走るしかないのだろうなあと思う。
アメリカのAppleのコンピューターはほとんど安くならないけども、業績はいい。
ヨーロッパのベンツやルイヴィトンなんかも高いけども、ブランド価値から欲しがる人は多い。

ただ日本メーカーってブランド化が信じられないくらい苦手で、
頭が固い方々はMade in Japanが未だに「品質がよくて、安いものを提供する信頼性」とか言い出すので、
あんまりこだわりぬいたものを高く売って、満足度を高めるみたいな戦略ができそうもない。

これからの製造業は、それに成功してる会社に投資していくと将来勝ち馬に乗れるかもしれない。