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四十三庵

蔀の雑記帳

ITが人間の雇用を奪うのか

E・ブリンニョルソン(Brynjolfsson。なんて読むんだ)の著作。
アメリカで失業率が高止まりしている原因は、実は「IT失業」なのだ、ということを述べている本。
僕はゼミでITと経済学で論文を書いたりしてたんだけど、参考文献探すとこの分野だとBrynjolfssonくらいしかまともに研究している人がいなくて、このひとの論文を結構参考にした。
そんなつながりもあってこの本を珍しく定価で買って読んでみたが、いい本だった。

本の内容は実際に読んでいただければいいと思う。
この記事ではITと雇用についての僕なりの考えがまとめられたらと思う。

  • ITが奪う雇用

データ分析をするまでもなく、直感的にITが進展すれば、人間の仕事はなくなりそうだ。
産業ロボットが工業高校卒の機械工の雇用を奪ったように、ITは事務員や中間管理職の雇用を奪おうとしている。
(これは計量分析からも裏付けられている)
紙ベースだった仕事が、全部システムで置き換えられてしまうからだ。

  • 「創造的な仕事」という幻想

IT肯定派は、
「ITが雇用を奪うという考え方は違う。ITは、単純労働から人間を開放してくれるのだ。
単純計算はすべてパソコンがやってくれる。
僕等はその分人間にしか出来ない仕事をやろう。
人間にしか発揮できないクリエイティビティを大事にしていこう」
という主張をよくする。
茂木健一郎の脳科学講義」あたりで茂木健一郎が同趣旨のことを書いていたように記憶している。

この主張は理想論ではあるが、現実的にはキツイ話である。
なぜならば、単純労働の対価は安定しているのに対して、創造的な労働の対価は不安定だからだ
工事現場で日雇いで働けば、とりあえず一日一万円とかは確実にもらえる。
建物を建てる依頼主が、その費用を負担しているからだ。
労働者に求められているのは、一日現場で汗水流すことだけだ。

それに対して、「創造的な仕事」の報酬はどこから来るだろうか。
たとえば漫画家は、ヒット作を産めるかどうかで、収入は天井は何億円、下は何十万円単位の幅がある。
「全ての単純労働をコンピューターとロボットで置き換えた」SF的世界が実現したとしよう。
人間が行うのは、高度に知的な創造的な仕事のみ。
単純化のために、そのSF的世界の住人は、全員ソーシャルゲームを作って生計を立ててるとしよう。
ソーシャルゲームというと、10本出して、ヒットするのはせいぜい1本とかの割合だ。
となれば、SF的世界の住人は、10人に1人は億万長者になれるが、後の9人は生活成り立たず野垂れ死ぬだろう。

全員が全員、スティーブ・ジョブズにはなれないのだ。
(了)