四十三庵

蔀の雑記帳

自動車業界の研究(自動車メーカー)

アベノミクスで相場の空気が一変したのは確かで、日経225に採択されてる銘柄がすごい勢いで上がっていった。
僕はいずれ沈静化すると思ってるけども、日本経済のためには真実に気づくよりも、
みんなが「これから景気が良くなる!」と信じてもらった方がいいと思うので、できるだけ長く上昇相場が続いてほしいなと思うようになっている。


日銀の物価2%へのコミットメントで、物価が上がるかどうかは疑わしいけれど、為替相場に与えた影響というのは甚大だった。
円安になると日本の製造業は息を吹き返す。
日本の製造業と言えば自動車メーカー。
というわけで今回の記事では自動車業界についてつらつら書いていこうと思う。

ただ自動車業界といっても、アイシン精機みたいな自動車部品メーカーとか、
オートバックス自動車保険などの自動車関連サービス、中古車市場とかやりだすとキリがないので、今回の記事は「自動車メーカー」を中心にさせてもらう。

  • 自動車業界の規模感

なんだかんだ言って、自動車産業と電機産業は日本の製造業の柱である。
電機は先行きビミョーではあるのだけど、自動車は依然として強い。
日本企業の従業員数ランキングを見ると、

1位 7203(株式コード) 東証1部 トヨタ自動車(株) 328,762人(連結社員数)
2 6501 東証1部 (株)日立製作所 328,278
3 6752 東証1部 パナソニック(株) 308,882
4 9432 東証1部 日本電信電話(株) 237,000
5 6502 東証1部 (株)東芝 207,093
6 5802 東証1部 住友電気工業(株) 205,166
7 7751 東証1部 キヤノン(株) 196,968
8 7267 東証1部 ホンダ 187,094
9 9064 東証1部 ヤマトホールディングス(株) 179,497
10 6702 東証1部 富士通(株) 172,885

という具合に、自動車メーカーが二社、電機メーカーが六社。
後はNTTと、物流業界のトップであるヤマト。
そんな訳で、自動車業界は、日本の雇用にも大きな影響力を持っている。

  • 自動車業界の構造


なぜ自動車業界で、そんな大量の雇用が発生するかというと、その業界の構造による。
たとえばトヨタを考えてみよう。
トヨタ本社の単体だと、社員数は現在約6万人しかいない。
(6万人でも十分多いけど)
その本社で、「こういう車をつくろう!」とか、「こういうCMを流そう!」みたいな企画やマーケティングが行われている。

自動車業界で働く人の大半は、そういう仕事をしていない。
上の図からもわかる通り、自動車業界は自動車メーカーを中心として、上流と下流部門が存在する。
上流部門は製造部門で、下流部門は販売部門のことを指している。
上流部門で、国内外の部品レベルの工場から始まって、それがどこかの工場に集められ、組み立てられて、一台の車が完成する。
その後、下流部門の、トヨタの販売店に車が運ばれていく。

で、販売店に来た客に、自動車ディーラーたちが車を売りさばく、というのが一連の流れになっている。
これはトヨタのみならず、どこの自動車メーカーも同じだ。

2chの公立中学校の同窓会にありがちなことというコピペの、

・「俺、トヨタに内定した!」と言う奴は99%の確率でディーラー、あるいはライン工

というのは、真理を突いてると思う。

ちなみにトヨタ本社に採用されるためには、5〜7回のリクルーター面談を通過しないといけないらしい。
ホンダに採用されるためには、A4ほぼ白紙の紙(が三枚あった)に、「なぜあなたがホンダに入ろうと思ったのか書け」みたいな漠然とした質問への解答をびっしり書かなきゃいけない。

  • 日本の主要自動車メーカー

日本の自動車メーカーを、2011年の売上高順に並べるとこんな感じ。
1位 トヨタ自動車 18兆5836億円
2位 日産自動車  9兆4090億円
3  ホンダ     5兆8059億円
4   スズキ     2兆2089億円
5   マツダ     2兆0330億円
6   三菱自動車工業 1兆8072億円
7   ダイハツ工業   1兆6313億円
8   いすゞ自動車   1兆4000億円
9   富士重工業   1兆3890億円
10  日野自動車   1兆3145億円

自動車メーカーの大手五社っていうと、トヨタ・日産・ホンダ・マツダ・三菱の五つらしいけども、
新興国で売上伸ばしまくってるスズキが急上昇。
世界の5強だと、GM(米)・トヨタVW(独)・現代(韓)・日産ルノー連合(日仏)らしい。

基本的にはこの10社の株価とか財務とか見ていこうと思ってるんだけども、その前にグループ関係を見ていこう。
自動車メーカーは提携関係が非常にややこしい。

トヨタ自動車 → ダイハツ日野自動車を関連子会社化(株式過半数所持)。富士重工業筆頭株主でもある。
日産自動車  ← 99年の経営危機でフランス・ルノーの傘下に
ホンダ   独立
スズキ ←アメリカGMと提携していた。GMの経営危機で提携解消。VWとの提携を探るが、色々こじれて決裂。
マツダ  ←フォードが筆頭株主だった。リーマンショックで経営悪化したので株の大半は売却されているが、協力関係は維持。
三菱自動車工業 ←ダイムラー資本提携していたがリコール隠しで決裂する。
ダイハツ工業 ←事実上のトヨタの小型車部門
いすゞ自動車  ←元GMの傘下。経営悪化にともない資本関係解消。
富士重工業 ←バブル前は日産、バブル後はGMGM経営悪化後はトヨタとめまぐるしく筆頭株主が変わる
日野自動車 ←トヨタの関連子会社。事実上のトヨタのトラック・バス部門

こう見るとホンダの独立独歩の姿勢がすごくカッコよく見える。
さて、個別企業を見ていこう。

(株価は断りのない限り、2013/05/31前場終了後の株価)
元々は豊田自動織機という、大正時代に創業した紡績機械の会社の自動車部門だったが、時代の流れで日本を代表する企業に。
実は資本関係では豊田自動織機が本社なのだ、という小ネタをよく使うひといるけども、
現在は敵対的買収に備えて、豊田自動織機トヨタ株6.25%程しか持ってないようなので、もうその小ネタ古いですよ。

現在の株価は6060円。
一年前は3000円台で推移していたことを考えれば二倍になっている。
それもそのはずで、2013年3月期の売上高が 22兆641億円、営業利益1兆3208億円(前年比271.4%アップ)という大正義っぷり。
887万1千台売れたそうだ。
法人税もきっちり4000万円くらい納めてる。

配当も90円/株にするそうなので、配当利回りおよそ1.4%。
貯金の代わりに買うには非常にいい銘柄なのではないでしょうか。
売買単位が100株単位なので、最低60万円ないとアレですけど…
売上高(百万) 2011  2012  2013
18,993,688 18,583,653 22,064,192
経常利益 2011 2012 2013
563,290 432,873 1403649
ROA総資産利益率) 2011 2012 2013
1.36% 0.94% 2.91%
ROE自己資本利益率) 2011 2012 2013
3.95% 2.72% 8.48%
自己資本比率 2011 2012 2013
34.70% 34.40% 34.20%

  • 日産

(こっから株価は6月3日の終値
その昔はトヨタと日産のツートップだったほどであるが、バブル崩壊で経営危機に。
そこからのカルロス・ゴーン社長就任からの復活劇は御存知の通り。
東銀座にあった本社を、横浜市の誘致策を利用して、横浜に移転。
グローバル本社と銘打っている。
横浜駅降りるとけっこー目立つ。
株価は1,070円。

売上高 2013  2012  2011
9,629,574百万円 9,409,026百万円 8,773,093百万円
経常利益
529,320百万円 535,090百万円 537,814百万円
ROA総資産利益率
2.87% 3.13% 3.05%
ROE自己資本利益率
9.95% 11.22% 11.30%
自己資本比率
29.20% 28.40% 27.40%

主な財務指標はこんな感じ。売上規模で見るともうトヨタには及ばないが、ROEをコンスタントに10%台に保ってるのはさすがの経営力。
他社と比較すると、2013年のアベノミクスの恩恵はあんま受けてない感じだね。
日本経済が不況のときに着実に稼ぐけど、その分回復局面で大きくドカンと戻すことはないようだ。

  • ホンダ

日本の自動車メーカーでは唯一どことも協力関係を結ばず、孤高を保っているホンダ。
株価は3735円。
2013年の売上で見ると、日産を抜いてる。

売上高 2013  2012 2011
9,877,947百万円 7,948,095百万円 8,936,867百万円
経常利益
488,891百万円 257,403百万円 630,548百万円
ROA総資産利益率
2.89% 1.81% 4.60%
ROE自己資本利益率
7.78% 4.78% 12.17%
自己資本比率
36.90% 37.40% 38.50%

なんかホンダ=国内生産ってイメージあったけど、普通に三年前くらいから海外移転を進めていて、
他のメーカー同様、日本国内での製造は、海外のそれの半分未満となっている。

あ、ちなみにホンダと日産は配当利回り2%くらいある。

  • スズキ

安い軽自動車と、新興国市場でブイブイ言わせてる会社。
一株2,406円。
売上高 2013 2012 2011
2,578,317百万円 2,512,186百万円 2,608,217百万円
経常利益
155,593百万円 130,553百万円 122,502百万円
ROA総資産利益率
3.36% 2.38% 1.96%
ROE自己資本利益率
7.53% 5.51% 4.70%
自己資本比率
46.10% 42.90% 43.60%
売上規模にして、2兆5000億円程。経常利益にして1500億。
自己資本比率が急速によくなってる。

広島県と言えば……な大企業。
広島カープの実質的な親会社と化している。
しかし知名度の割には、業績は振るわない。
株価は375円。

売上高 2013 2012 2011
2,205,270百万円 2,033,058百万円 2,325,689百万円
経常利益
33,087百万円 -36,817百万円 36,862百万円
ROA総資産利益率
1.76% -5.84% -3.23%
ROE自己資本利益率
7.11% -24.00% -12.82%
自己資本比率
25.10% 24.50% 24.20%

円高で赤字出しまくってたけども、アベノミクスでなんとか延命治療を受けている感じ。
とはいえ強気相場では、こういう株が一番あがりやすい。
2012年は100円台で推移していたのが、アベノミクスで四倍になった。

三菱グループといえば、三菱商事を中心に、三菱UFJ銀行・三菱重工など、あらゆる業界のトップに君臨しているが、その例外が三菱自動車
そもそもの凋落の原因はリコール隠し
現在148円だけども、アベノミクスで例外的に右肩上がりとなってない銘柄。
5月に短期的に高騰して200円ぶち抜いた後に、すぐに落ちるというボロ株のような動きをしてる。
マツダと同じような値動きしてもよさそうなもんだと思うんだけど、まあそのぐらい希望のない会社と見られてるってことでもあるのかな…
業績は実はわりとよい。

売上高 2013 2012 2011
1,815,113百万円 1,807,293百万円 1,828,497百万円
経常利益
93,903百万円 60,904百万円 38,949百万円
ROA総資産利益率
2.74% 1.82% 1.22%
ROE自己資本利益率
12.72% 9.65% 6.75%
自己資本比率
23.40% 19.40% 18.20%

数字だけ見たらマツダより上がってもいい気はするけど、やっぱリコール隠しのネガティブイメージが根強いのかなあ。
社内の空気もよくないらしいし、リコール隠し抜きにして、カスタマーサービスの評判は悪いし、確かにちょっと数字よかったくらいでは買う理由にはならないのかも。
まっ!いざとなったら天下の三菱財閥が助けてくれるんじゃないですかね。

あ、マツダと三菱は配当ゼロです〜。

一株2,046円。
トヨタの小型車部門みたいな存在だけども、業績は非常によい。

売上高 2013 2012 2011
1,764,976百万円 1,631,320百万円 1,559,412百万円
経常利益
148,173百万円 128,223百万円 112,215百万円
ROA総資産利益率
6.21% 5.47% 4.70%
ROE自己資本利益率
17.49% 16.00% 14.46%
自己資本比率
37.20% 33.70% 34.80%

配当利回りも2.7%。PERも自動車株の中では10.71倍と過熱感なし。
買うべきはトヨタよりもこっちやったんや!!!!!!
でもなんでこんな有名銘柄が見過ごされてたのかと思ってみてみると、どうも売買単位が1000株な模様。
なので最低でも200万円以上ないとダイハツは買えないようで、それが個人投資家の買いを妨げてるんじゃないかな〜。

走ってるトラックみるとだいたいはISUZUって書いてるくらいには売れてる大型車メーカー。
一株773円 。
この会社もダイハツと同じくらい業績が良い。
円安効果かとも思ったけど、決算報告見ると為替の影響は軽微っぽい。

売上高 2013 2012 2011
1,655,588百万円 1,400,074百万円 1,415,544百万円
経常利益
141,719百万円 102,893百万円 91,258百万円
ROA総資産利益率
7.56% 7.85% 4.64%
ROE自己資本利益率
20.44% 24.55% 16.49%
自己資本比率
39.40% 34.20% 29.50%

やっぱり株価もっと上がってもいいきがするんだけど……
国内景気というよりは発展途上国の景気次第っていうところはある銘柄なので、こんなもんなのかなあ。

一株2,193円。
富士重工っていうとわかんないけど、要は「SUBARU」。
実はアベノミクスで一番株価がバブった自動車メーカー
2012年は500円近かった株価が、今では4倍以上に。
数字見ても、2012年までが過小評価だった感がある。

売上高 2013 2012 2011
1,912,968百万円 1,517,105百万円 1,580,563百万円
経常利益
100,609百万円 37,277百万円 82,225百万円
ROA総資産利益率
8.16% 3.03% 4.16%
ROE自己資本利益率
22.87% 8.91% 12.69%
自己資本比率
37.70% 33.30% 34.70%

一株1,412 円。
トヨタのバストラック部門
地味だけどしっかりした技術を持ってる会社という印象。
私事だけど、昔総武線に乗ってたら泥酔したサラリーマンが電車から飛び降りていって、カバン忘れてったから拾って、
連絡先探そうと中身ちらっと見たらふつーに社員証入ってて、それが日野自動車だったことがある。
まあ、地味な会社だなーという感じ。
(ちゃんと駅に返した)

スバルほどではないけども、この会社もアベノミクスで株価3倍くらいになってるね。
売上高 2013 2012 2011
1,541,357百万円 1,314,588百万円 1,242,691百万円
経常利益
66,922百万円 34,577百万円 25,058百万円
ROA総資産利益率
5.45% 2.08% -1.34%
ROE自己資本利益率
20.13% 8.13% -5.02%
自己資本比率
29.30% 24.70% 26.60%


日野といすゞの株価の差はなんなんだろうなあ……

  • まとめ

四十三庵的にはダイハツいすゞを買い推奨、富士重工マツダは売り推奨で。
あ、でも今週はとりあえず買うのやめときましょう。
(了)