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四十三庵

蔀の雑記帳

日本社会の階層化について(格差社会の現状について、と言っても可)

論考

日本全国の一世帯の所得分布は、2012年度の調査によるとこんな感じらしい。

平均が548.2万円だが、分布を見る限り高所得者が平均を釣り上げているっぽいので、より実感と合うのは中央値の432万円の方だろう。

格差社会という言葉がちょっと前にマスコミで頻繁に使われたけれども、
それが日本社会の実態と合っているかには議論がある。
けれど格差社会という言葉が使われたのは、それが多くの人の実感に響いたからだと思う。
僕自身も、日本社会が階層化しているのを感じている。

「小泉・竹中政権が格差を拡大した!」というのも短絡的な話だと僕は思っていて、
彼らは時代の要請に答えただけであって、製造業の非正規雇用を禁止したままにしておいたら、
本格的な国内産業の空洞化であったり、外国人労働であったり、それはそれで別の問題が起こったろうなと考えられる。

先進国の(とりわけ若年の)雇用が、GDP水準のわりに厳しいのは、
発展途上国の教育がそれなりに整ってきて、安くてエネルギッシュな途上国な若者を使えるようになったのが大きいかもしれない。

で、竹中平蔵が昔「日本は格差社会ではない」という証拠に、「ジニ係数が下がっている」というのをあげていた。
ジニ係数というのは、ローレンツ曲線と45度線の間の面積のことなんだけども、
詳しくはWikipediaを読んでもらうか、とりあえずここでは0から1の間の数字で、
0が完全に平等な所得分配を実現した場合、1が完全に不平等な所得分配を実現した場合だと思ってもらえれば良い。

実はこのジニ係数、どの統計をあたるかによって微妙に数値が異なる。
OECDの調査と日本国内の調査でも、一致することはあまりない。
それは「所得」の定義が異なるからだ。
所得というのは、自力で稼いだ金の他に、年金であったり医療保険であったり生活保護であったり、国や自治体から給付された金が含まれる。
これをどこまで含めるかで変わるし、分配前所得(自力で稼いだ金)に関しても、どの調査によるかで値が異なる。

竹中平蔵がどの統計を見て「小泉政権下ではジニ係数があがっていない」と断言したのかよくわからないが、
実際に統計を見る限り、
ジニ係数は2000年前半の自民党政権下で上がり、2000年後半の民主党政権下で下がった
というのが実態のように見える。


2008年のOECD調査


2011年の厚生労働省の調査(「所得再分配調査」)

ジニ係数に関する議論に関しては、非正規雇用云々というよりかは、
高齢化が進んで年金受給者が増えているというだけのような気もする。
厚生労働省の方の再分配前のジニ係数を見てもらえれば、「格差社会感」が高まっているのもなんとなく頷ける。
もしも政府の再分配政策がなければ、日本はジニ係数0.5を超える中国アメリカ以上の格差社会ということになる。

(同上)

  • 正規vs非正規

僕が日本の格差社会についてマズイと思ってるのはむしろ10年後、20年後の話で、
今20代・30代の非正規雇用で食っていってる人々が40代・50代になったときだ。

(「平成24年賃金構造基本調査」)

非正規雇用というのは定期昇給がない
雇う側にとってはそこがメリットなんだけども、40、50になったときに本格的な所得格差が生じる。
2chで有名な「白木屋コピペ」というのが、その年取ったときの正規・非正規の所得格差を示している。

なあ、お前と飲むときはいつも白○屋だな。
一番最初、お前と飲んだときからそうだったよな。
俺が貧乏浪人生で、お前が月20万稼ぐフリーターだったとき、
おごってもらったのが白木屋だったな。
「俺は、毎晩こういうところで飲み歩いてるぜ。金が余ってしょーがねーから」
お前はそういって笑ってたっけな。

俺が大学出て入社して初任給22万だったとき、
お前は月30万稼ぐんだって胸を張っていたよな。
「毎晩残業で休みもないけど、金がすごいんだ」
「バイトの後輩どもにこうして奢ってやって、言うこと聞かせるんだ」
「社長の息子も、バイトまとめている俺に頭上がらないんだぜ」
そういうことを目を輝かせて語っていたのも、白○屋だったな。

あれから十年たって今、こうして、たまにお前と飲むときもやっぱり白○屋だ。
ここ何年か、こういう安い居酒屋に行くのはお前と一緒のときだけだ。
別に安い店が悪いというわけじゃないが、ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ。
油の悪い、不衛生な料理は、毒を食っているような気がしてならない。
なあ、別に女が居る店でなくたっていい。
もう少し金を出せば、こんな残飯でなくって、本物の酒と食べ物を出す店を
いくらでも知っているはずの年齢じゃないのか、俺たちは?

でも、今のお前を見ると、
お前がポケットから取り出すくしゃくしゃの千円札三枚を見ると、
俺はどうしても「もっといい店行こうぜ」って言えなくなるんだ。
お前が前のバイトクビになったの聞いたよ。お前が体壊したのも知ってたよ。
新しく入ったバイト先で、一回りも歳の違う、20代の若いフリーターの中に混じって、
使えない粗大ゴミ扱いされて、それでも必死に卑屈になってバイト続けているのもわかってる。
だけど、もういいだろ。
十年前と同じ白木屋で、十年前と同じ、努力もしない夢を語らないでくれ。
そんなのは、隣の席で浮かれているガキどもだけに許されるなぐさめなんだよ。

20代の頃は、普通の企業の正社員でも年収300万前後*1がいいトコなので、
バリバリ働いてるフリーターの方が手取りよかったりすることさえある。

20代、30代のフリーターは、僕のバイト先にもいるけれど、あんまり悲壮感がない。
むしろ会社のしがらみとかがない分楽しそうに見えるんだけども、将来的に行き詰まる場面が出てくるのだと思う。

で、実際どのぐらい非正規雇用の労働者がいるのかというと、
男女計

男性

女性


女性の方が割合が多いのは既婚のパートを含むので、どうしてもそうなる。
そもそも女性の非正規雇用はそんなに問題ないと僕は思ってる。
結婚して、男が稼げばいいからだ。
共働き世帯が増えているとはいえ、未だに専業主婦というのは一定の需要がある。
実際にそんな都合よく結婚できるかどうかは別として、希望はある。
多分統計の中には、結婚もできず、非正規雇用のまま30代・40代になっている層も一定数いるとは思うんだけど、
結婚してパートやってる人と区別できないので、実態はわからない。
(バイトやってるとちょいちょい会うから、実感ベースではそれなりにいると思うんだけど)*2

本格的に逃げ道がないのは、男性の非正規雇用の方で、
僕が今後日本で格差問題が深刻になってくるだろうなと思うのは、男性非正規雇用がそれなりの数いるからである。
比率にしてみると、男性20代後半〜30代の非正規雇用の比率はせいぜい10%〜20%である。
(20代前半の非正規雇用率の高さは、学生のバイトを相当数含んでいるとかんがえられる)
ただ、実数を見てみると、なかなか馬鹿にできない数になっているのがわかる。

年齢 正規 非正規 総数
15〜19歳 15 30 45
20〜24歳 106 84 190
25〜29歳 234 55 290
30〜34歳 276 49 326
35〜39歳 343 35 378
40〜44歳 353 37 390
45〜49歳 295 27 323
50〜54歳 264 25 289
55〜59歳 231 34 265
60〜64歳 102 126 228
65歳以上 50 113 163
15〜64歳 2220 503 2724

(単位:万人)
25歳から29歳の間の非正規雇用者は55万人、30〜39歳は84万人存在する。
このおよそ100万人の非正規雇用者は、恐らく今後定期昇給の恩恵にほとんど預かれないまま中年になっていくだろう。
金がなければ結婚相手がいたとしても、今の世の中子供も作れない。
現実問題、結婚に踏み切れないと思う。
そんな訳で、少子化問題も今後とも解決しないだろう。

未婚率が増加する理由 〜女性の6割は未婚〜より)

  • 日本の階層構造

つらつら書いてきたけれども、この記事で言いたいことは、今の日本は階層化しているということだ。
実感ベース(主観)と統計(客観)が混じることにはなるが、納得感はあると思う。

このヒストグラムを使いながら、日本の階層構造を説明しよう。

1.富裕層(年収1000万円超:上位11.3%)
官僚・政治家・医師・弁護士・大物タレント・大企業役員など。
企業の業種としては総合商社、マスコミ、メガバンクなど。
多くは東京都に居住。

2.旧中間層(年収501〜1000万円:31.1%)
平均年収以上稼いでいる層。
結婚して子供が持てるライン。
普通のサラリーマン、公務員、教員、稼げている自営業者など。
首都圏、名古屋大阪などに多い。

3.新中間層(年収201〜500万円:37.4%)
今の日本の実質的な中間層。
若手サラリーマンと稼いでる派遣・契約社員、健康なフリーター、農家等。

4.貧困層(年収199万円未満:19.9%)
多くは定年退職後の老人。
稼げていないフリーター、無職、病気・障害持ちなど。
親の仕送りや、生活保護受給や年金の給付があって食っていける。

日本の世帯数はざっくり5000万世帯程なので、それを元に概数でそれぞれの階層を算出すると、

1.富裕層→565万世帯
2.旧中間層→1555万世帯
3.新中間層→1870万世帯
4.貧困層→995万世帯

  • 正社員だからといって勝ち組ではない

大事なのは自分がどこにいるか、ということではなくて、これから日本全体がどうなっていくかということだ。
今の日本だと、富裕層と旧中間層が税金や社会保障費を負担している。
新中間層は相対的に負担が軽い。
貧困層は完全に負担がなく、受益だけである。
受益と負担のバランスは階層間で著しく悪い。

富裕層は自分たちの子供を私立の中高一貫校に入れて、世代間の階層の固定化を行う
今後の日本でも富裕層の地位は維持されていくだろう。

旧中間層から、新中間層へのシフトが起こり、更には新中間層から貧困層へのシフトが起こる。
比率で言うと、
1.10%
2.20%
3.40%
4.30%
くらいな感じに、2030年くらいまでになるのではないだろうか。
そうなると今の受益と負担のバランスは維持できなくなって、
1)富裕層・旧中間層の負担増
2)社会保障・年金のカット
のどちらかを選択しなければならない。

「若者は投票率が低いから意見が届かない」のウソで書いたとおり、一人一票の選挙制度の元では、
定年で何もすることがない年寄りと平日深夜まで馬車馬のごとく働かされてる若者が戦っても、
仮に若者全員が投票を行ってもその民意が反映されることはないし、
現代の価値観が多様化した若者がそこまで結束することも考えられない。
したがって、今後の日本では
1)富裕層・旧中間層への負担増
が選択されることは火を見るより明らか。

そんなわけで自分が仮に正社員で、それなりにお金を稼げるからといっても、
勝ち組でもなんでもなく、むしろこれからどんどん政府にむしりとられていくことになるという訳だ。

本当は大学卒業後の進路とかまで扱いたかったんだけども、長くなったのでここで終わり。

●参考
平成24年 国民生活基礎調査の概況
COUNTRY NOTE JAPAN (IN JAPANESE AND ENGLISH): JAPAN
平成23年所得再分配調査結果について
平成24年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況
労働力調査(基本集計) 平成25年(2013年)9月分 (2013年10月29日公表)
(了)

*1:しかも社会保障関連で持って行かれて手取りは更に減る

*2:非正規雇用問題を考える上で、夫がそれなりに稼いでて、家計を助けるためにちょっとパートという女性と、不本意ながら非正規で働き続けている女性が同じようにカウントされてしまうのは、今の統計の重大な欠陥だと思う。