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四十三庵

蔀の雑記帳

博士課程は本当に就職できないのか

就活

「末は博士か大臣か」
なんていう言葉があったけれども、今の日本では「俺、博士になりたい!」と言っても、
親からすると「ちょっと考えなおせ」と言いたくなりたい状態になっている。
お勉強が出来るだけでは生きていかない社会になりつつある。

Twitterをやってたらこんな画像が回ってきた。

これを見る限り、学部四年で卒業して就職するのと、学部四年から+修士二年博士課程三年*1の五年間かけて就職するのとでは、
五年分の学費と勉強をしたのに、学部四年で卒業した人間の方が就職できていることになる。

とは言えTwitterで回ってきた画像なんか信頼出来ない。
僕は学部・修士・博士課程の卒業者の進路を見るために、「学校基本調査」を開いてみることにした。

  • 学部

まずは学部卒の進路から。
日本で一年間に大学で学士号をとって卒業する人はだいたい55万人。
その2013年度の進路がこんな感じ。

大学院進学者が6万人(11.3%)。
正社員として雇われたのが37.5万人(63.2%)。
グラフ上で水色になっているのが非正規雇用、オレンジがバイト(フリーター)、
黄色が既卒無職(就職浪人・公務員浪人・家事手伝い含む)、灰色が謎のゾーンとなっている。
就職率は男女あわせて67.3%。(有期雇用含む)


ここ数年の推移。
リーマン・ショックで一気に悪くなって、そこからゆるやかに回復している時期。

・学生数
この棒グラフの右軸を見てもらえばわかるとおり、
少子化で大学生の数が減る!大学の淘汰が起きる!」と言われているが、
ここ10年で学部生の絶対数は全く減っていない。
これは大学数の増加と進学率の向上によるもので、
2003年に702校あった大学は、2013年に782校に増えている。
大学進学率も2004年3月45.3%から2013年3月は53.2%に向上している。

子供の数は着実に減っているのに、新設大学が増えているので、
大学に行きたいだけであれば金さえ払えば学士号はもらえる時代である。

大学進学率

・性別
学部卒の段階においては、女性の方が就職率が高い。
これが修士・博士になると逆転する。

  • 大学院修士課程修了者

修士課程修了者は2013年にざっくり7.5万人。

就職率は73.2%。(有期雇用含む)
博士課程に行ってしまった人は7500人。

Twitterのあれでは触れられていなかったが、修士課程までなら実は学部よりも就職率が改善する。
ただしその理由は、修士でメーカーのエンジニアとかIT系のSEになる人とか、
主に理系院卒の就職率のよさに起因するものだと思われる。
2013年の修士課程を専攻別割合で見ると、工学系が41.5%もいる。
こいつらが就職率を大幅に改善させている。

③ 就職者総数を産業別にみると,「製造業」が 41.4%と最も高く,次いで「情報通信業」11.8%,「教
育,学習支援業」9.0%,「学術研究,専門・技術サービス業」6.5%等の順となっている。
④ 就職者総数を職業別にみると,「専門的・技術的職業従事者」が 77.8%(うち技術者 57.3%,教員
6.9%等)で最も高く,次いで「事務従事者」11.7%,「販売従事者」4.0%等の順となっている。
(「学校基本調査」より引用)


・学生数
リーマン・ショック後の就職難で、「とりあえず大学院行っとこう」という選択肢をとる学生が増えたためか、修士課程の学生は微増している。

・性別
理系の研究室の無精ヒゲ生やした理系男子たちが就職率を改善させているため、
修士卒では学部卒とは男女の就職率のよさが逆転する。

  • 大学院博士課程修了者(満期退学含む)

さて、問題の1.6万人程日本にいる博士課程である。

就職率65.9%。
有期雇用を除けば50.5%という、学部・院卒とくらべて顕著に低い数字が出ている。

これが所謂「ポスドク問題」というやつで、博士号をとったとしても、大学に所属するポストがなく、
都内の大学だったら一人公募を出すと条件に合った研究者が10〜20人は殺到してくる状態になっている。
常勤のポストには就けないけれど、食べていくために非常勤講師として何個か掛け持ちしているのが、
有期雇用の15.3%の研究者なのであろう。

ポスドク問題、高学歴ワーキングプアに関する記事まとめ


ここ10年の推移。
リーマン・ショックの影響とかを受けずに、ある意味安定している。

  • まとめ

正規雇用の比率で比べれば

1.修士 70.5%(就職率73.2%)
2.学士 63.2%(67.3%)
3.博士 50.5%(65.9%)

というランキングになる。
学部や修士景気動向次第で就職率が大幅に改善するけれども、博士はここ10年同じような傾向が続いている。

学問というのは本来人類の叡智の結晶であって、学問の進歩即ち人類の進歩であるはずだ。
博士といえば、その学問を発展させていく人々であって、
そういう人間をどう扱うかで国の未来も決まっていくはずだ。
少子化がすげースピードで進む日本で、大学が1.6万人の博士課程修了者*2のポストを用意することは現実的ではない。
少子化なのに大学を増やしているという矛盾した政策をとっているのも、彼らのポストをつくろうという政策的意図が恐らくはあるのだろう。
けれど大学を増やしたところで常勤のポストがどれだけ増えるかというと、統計を見る限り怪しい。
大学が博士号持ちを扱えないとなると、彼らをどう活かすべきなのか。
未だ、答えは出ていない。*3

  • 参考

平成25年度「学校基本調査」高等学校について
(了)

*1:博士課程制度よくわかってないけども

*2:満期退学者もいるかもしれないけど

*3:NHKのドキュメンタリー風のまとめ