四十三庵

蔀の雑記帳

僕の読書法

蔀ファン 2013/12/27 23:27
はじめまして。蔀さんの文章大好きです。質問なんですが、蔀さんは本をどのように読まれますか?よろしければ、そういった記事を書いていただければ嬉しいです。

日頃ブログのコメントは読むだけ読んで特に返さないんだけど、珍しく記事のリクエストがあったので、本の読み方について書いてみようと思う。

  • 精読と速読

文章を読む時は、基本的には何も考えずに読んでいる。
ただ文章を読むときには、読み込みの深さがあると思っている。
深さというのは理解度と言い換えてもいい。
文章を深く読み込むと、内容をきちんと理解して、かつ記憶に残りやすい。
所謂「精読」だ。

本を読むスピードと読み込みの深さは、トレードオフ関係になっている。
速く読もうとすれば、当然読み込みは浅くなる。

最近の目標は読書量を減らすこと
でも書いた通り、速読でたくさんの本を読むのには、読むだけ読んだ後何も残らないというデメリットがある。
言うまでもないことだけど、速読でたくさん本を読むメリットもある。
僕は記憶力が弱いので絶対無理だけど、さっと読んだ本のことをある程度覚えてられるなら、知識量は飛躍的に増えるだろう。
単純に活字中毒っていう人は、たくさん読んで楽しいだろうし。
その辺は好き好きである。

  • 精読について

なんで僕が精読を覚えたかというと、それは大学受験のときに遡る。
現代文の点がとれるときと、全然とれないときで波があった。
点数を安定させるために、精読を覚えた。
精読が出来るようになると、現代文の点数は安定するようになる。

精読といっても、キーワードに丸つけるとか、重要部分に線を引くとか、
言い換え部分はイコールで結ぶ!とか、何か特別なことをするわけじゃなくて、
文章に書かれていることを、正しく読んで、正しく理解するというただそれだけのことだ。
一文一文を、頭の中で声を出しながらゆっくり読んでいく。
意味が理解できなかったら立ち止まって、もう一度読んでみる。
言い回しが難解なときは、自分で噛み砕いて解釈してみる。
そんな感じで読み進めると、時間はかかるけれど、日本語で書いてあり、文章が破綻していないものだったら、理解できる。

でも、僕にとってこの読み方は遅くてストレス溜まるので、国語のテストのときくらいしかしない。
普段の本の読み方としては、もっと速読に近い読み方をしている。
ビジネス本とか実用書とかであれば、文章自体が言いたいことを明確にしてあって、読みやすいので、
そもそも精読する必要がない書き方になっているので、速読に近い読み方で問題ない。

  • 速読できる本、できない本

ビジネス本を精読する必要がない例として出したけれど、ビジネス本は速読できる本の代表格だ。
他にもライトノベル、新書は速読可能。
小説も今本屋の店頭に新刊として並んでるようなやつはだいたい速読できる。
村上春樹とかも速読で読める。
あとは、教科書とかも、初心者向けに噛み砕かれて書かれたものだったら、速読できる。

逆に速読できない本って何かというと、

下手な翻訳文
古典作品
昔の文学
専門書

あたり。
何が違うかというと、一文一文の重みが速読できる本とは全然違う。
僕は昔速読で何でも行けると思ってた時期に、
アダム・スミスの「国富論」とマックス・ウェーバーの「プロ倫」を速読で読んだことがあるんだけども、正直全然内容が頭に入ってこなくて、今も内容一つも覚えてない。
古典作品で、かつ岩波特有の英文和訳的な翻訳で、速読は不可能になっている。


速読できるものとできないものについて、具体例を出して説明しよう。
今たまたま三上延ビブリア古書堂の事件手帖」が手元にあるので、これを速読できる文章の例として引用する。

俺が病院に行ったのはその日の夕方だった。午後になって店に現われた篠川さんの妹が、部活がないので店番を替わると言ってくれたのだ。病室のドアをノックすると、か細い声が中から返ってくる。はっきり聞き取れなかったが、とにかく中にいるらしい。
三日ぶりに会えるというのに、俺はさほど浮かれていなかった。昼間現われた志田という客のこと――彼の持ち込んだ「頼み」に気を取られていたからだ。
「五浦です。失礼します」
と、言ってドアを開ける。
「さっきメール送りましたけど、本の査定を……」
俺ははっと口をつぐんだ。篠川さんはベッドに体を起こして、バスタオルで髪を拭いていた。どう見ても風呂上がりで、上気した白い肌が桜色に染まっている。俺の存在に気づいた途端、凍りついたように動かなくなった。

ビブリア古書堂とかは、ラノベの中ではまだまともに日本語書いてる方だと思うけれど、それでもまあ相当読みやすい。
基本的にライトノベルは漫画やアニメがベースで、読んでいて漫画のワンシーンが頭に浮かぶように文章を書くものなので、これでいいんだと思う。
逆にこの文章を精読しろ、という方が難しい。
ラノベの100ページは森鴎外1ページ分に相当すると僕は思っている。

で、逆に速読できない小説として、これも手元にあった三島由紀夫豊饒の海」を引用してみよう。

本多は恰好な事務所が見つかるまで、ひとまず丸ビル五階の友人の事務所に間借をして看板をかけた。その友人も弁護士で、大学で同級だったのである。
ある日、洞院宮家の事務官が訪れて宮の内意を伝えた。これは甚だ異例なことだったので、本多はおどろいた。
茶色いリノリュームの床を靴音もさせずに忍びやかに歩く黒い背広の小男を見たときに、本多はいいしれぬ忌わしいものを感じたが、応接室へ招じ入れてからますますこの感を強めた。波型硝子の壁だけで事務所と接している小さな応接室を、小男は冷たい表情で、しかし不安げに見廻した。声が洩れるのを怖*1れているのである。
 金縁の眼鏡をかけた蒼白な魚のような顔は、その棲みならえた水の冷たさ暗さ、決して日の目を見ることがなく、繁文縟礼の藻の下にじっと息をひそめている生活をありありと語っていた。

豊饒の海」の中には正直もっと読みづらい箇所あるんだけども、
ビブリア古書堂の事件手帖」との対比で、人が訪問してくるシーンを抜き取ってみた。
平成の今では使わない、リノリュームとか金縁眼鏡とかいうモノが出てくる時代背景のズレもわかりづらい要因だが、
それ以上に書いてあることが難しいというのが、速読を阻む要因だと思う。

実用文についても速読できるものとできないものがある。
たとえば、速読できるテキストとして僕の手元にある「コア・テキスト統計学」という本はわかりやすい。

1.1 分布
 私たちは数多くのデータにかこまれて暮らしています。多種多様なデータが新聞やニュースなどをとおして飛び込んできます。ここでは、そのような数多くのデータを「整理する」ことからはじめます。
 表1.1は一ヶ月間の携帯電話の利用料金を100人の大学生に聞いた結果です。このデータの羅列を見ても、みんなは(とはいっても調査に答えた100人ですが)どのくらい、電話料金を払っているのか?自分はみんなと比べて使いすぎているのか? などといった疑問に答えることはできません。統計学ではここであげた疑問のように、何かを知りたい、調べたい、などと何らかの目的をもって、データを要約していくことが重要なテーマとなります。
 そこで上に述べた疑問に答えるために、まずこの表のデータを度数分布表にまとめます。

と、まあこんな感じですごく平易に書かれている。
解説文自体はわかりやすいので、この説明でわからなければ、自分の頭が悪いんだろう、という風に思える。
予備知識があれば、こういうテキストは速読で大意がつかめる。

速読ができないテキストとして、ギボンズの「経済学のためのゲーム理論入門」の冒頭を引用しよう。

1 完備情報の動学ゲーム

 本章では、各プレイヤーが同時に自分の行動を選び、その選ばれた行動の組み合わせに応じて各自の利得を受け取るという単純な形のゲームを考える。そのような静学ゲーム(同時手番ゲームとも呼ばれる)の中で、ここでは完備情報(complete infomation)のゲームに考察を限る。つまり、ここで取り扱う状況では、プレーヤーの行動の組み合わせに対して各自の利得を対応させる各プレイヤーの利得関数が、全プレイヤーの共有知識となっているわけである。

こういうテキストは速読無理なので、じっくり読みときましょう。

  • 読書録

あと人間の記憶力は昔読んだ本の内容は時間がたつとほとんど忘れるので、読んだ本はなんかしら記録つけとくべきだと思う。
僕はブクログというWEBサービスを使ってとりあえず読んだ本は全部備忘録的に記録してる。

蔀の本棚

読書メーターという類似サービスもあるので、どっちか使うといいと思う。

更に感銘を受けた本は内容の要約とか感想とか、エッセンスだけでいいので書き残しておくと、一年後あたりに読み返せるようにしておくと、
読んだ本が自分の血肉になってるような感じがしていい。
僕は記憶力悪いので、一年もたつと昔読んだ本はきれいさっぱり忘れる。
読むの二回目の本が新しい本みたいに読めてしまうと、一回目読んだときの時間はなんだったんだっていう話になる。

  • まとめ

難しい本はゆっくり読んで、ふつーの本はわりとパラパラ読んで、読んだ後は記録を残す。
そんな感じで読んでます。

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最近の目標は読書量を減らすこと
(了)

*1:原文では違う漢字だけど変換できない