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四十三庵

蔀の雑記帳

小熊英二著・編「平成史」

を読んだので、メモ的に。

  • 魅力がなくなった先進国に移民が来る理由

貧しい途上国から、発展し続ける先進国に移り住んで、頑張って働いて豊かな生活を掴むという、
アメリカンドリーム的な移民の幻想を、先進国に生まれた人間は未だに抱いている。
しかし冷静に考えてみれば、アメリカ生まれのアメリカ人でも、
一流大学を学生ローン借りてまで頑張って卒業したのに満足いく仕事がない!なんて言ってる時代のアメリカに移り住んで、
果たして豊かな生活をつかめる可能性がどのぐらいあるのか。
いわんやヨーロッパや日本みたいな経済成長すらしてない先進国に移り住む移民は何を考えているのか。
(日本は欧米みたいに「移民」を受け入れてないけども…)

この本の序章に、その疑問についての答えが書いてあった。
発展途上国には、海外移転した先進国の工場が建って、
一次産業で生計を立てていたフェイズから、工業化のフェイズへ移行している。
現地の工場で働いた場合、一生食っていける程の賃金は得られない。
そして先進国並の労働法が整備されていないので、割とすぐにクビになる。
クビになった後、田舎に戻って農業をやって食うか?というと、実はそれができない
発展途上国が、本当に貧しかった時代ならば、農業で生計を立てて、カツカツで生きていく選択肢があった。
しかし工業化は農村を破壊した。
農業で生計を立てるのは現実的に厳しい状態となっているのだ。
それに工場労働によって、「都会的」な生活を経験した途上国の若者にとって、農村の閉鎖的な生活は魅力的ではない。
そういうわけで、アメリカンドリームのような成功はもう消えたけれど、移民は先進国にやってくる。


この構図は、実は日本国内の「東京と地方」にも全く同じように成り立つものだったりする。
地方から上京してフリーターやってる知り合いがバイト先にも何人か居るけども、
アフリカからフランスにやってきてゴミ収集してる黒人移民と境遇的には似ている。

  • 日本の階層化

イエスタ・エスピン=アンデルセンの「福祉レジーム」の三類型というのがあるそうだ。
福祉システムについて、欧米の国々を三つに大分類したものだ。

自由主義(→アメリカ。自由至上主義)
社会民主主義(→北欧。重税の代わりに手厚い社会保障
保守主義(→南欧。共同体重視。)

じゃあ日本はどれに当てはまるのか?
著者にして編者の小熊は、日本の福祉レジームは

正社員・公務員などの古き良き日本型工業社会の恩恵を受けた人々には保守主義レジーム
ポスト工業社会への対応を迫られた中小企業の社員やフリーター派遣社員には自由主義レジーム

という風に二分化されている、と指摘する。

僕も概ね同じように考えている。

「平成史」の中では、小熊英二以外の著者も寄稿しているんだけど、情報化についての章がひとつある。
その中で、ネットメディアはすべて「2ちゃんねる化」して、便所の落書きと化す、という文章があって、それも僕の考えと一致している。
日本だと、ブログ、mixiTwitter、あらゆるものが匿名をいいことに2ちゃんねる並の実のない議論に引き落とされることになる。

  • この本について

序章(総説)、政治、地方と中央、社会保障の四つが特に面白かった。
後半三つの「教育」「情報化」「国際環境とナショナリズム」はそんなに響かなかった。
増補版ではこれに「在日朝鮮人」の章が加わるんだけども、読んでたのが旧版だったらしく、読んでいない。

  • 関連記事

日本社会の階層化について(格差社会の現状について、と言っても可)
2ちゃんねる化するTwitter

  • 参考URL

【平成史】レポート
読後の感想を書いてるブログ。
『平成史』のレビュー (osawatakumiさん)
ブクログのレビューにしては長い要約。
(了)