四十三庵

蔀の雑記帳

本読んで思ったこと

田舎でも都会でもない町について(ショーン・プレスコット「穴の町」)

穴の町 読んだ。 穴の町、という日本語タイトルは少し元より説明的になっていて、 原題は"The Town"なので、より抽象的だ。 目次 目次 ストーリー 町を書くこと 田舎でも都会でもない町 構成 永遠の観察者 スーパーのバイトにすら落ちるリック 都会と田舎、…

みずほ銀行のシステム統合の本読んで思ったこと

みずほ銀行の新システムMINORI稼働に至るまでを追った本を読んだので、それに関連することを書く。 記事のレベル感はちょっと迷うところなのだが、ある程度リテラシーが高い読者を前提にするので、用語の解説などは行わない。 みずほ銀行システム統合、苦闘…

アメリカという国はいかにしてアメリカになったか(「若い読者のためのアメリカ史」)

世界史は履修したが、アメリカの歴史はなんとなくしか知らない気がしたので、下記を読んだ。 若い読者のためのアメリカ史 (Yale University Press Little Histories)作者:ジェームズ・ウエスト・デイビッドソン出版社/メーカー: すばる舎発売日: 2018/12/22…

日本人のつくる組織の何がダメなのか(「失敗の本質」)

ソフトウェア業界では、GAFAに代表されるアメリカのIT企業が絶好調なのに対して、 日本のIT企業(具体的にはNTT系、富士通、NECなど)は色々遅れている。 そこに関しては色んな論点があって、それこそ一冊の本が書けるレベルだけれど、 「そもそも日本人のつ…

2019年のサブカルチャー

2019年のサブカルチャーを語ります。 小説 ウエルベック「セロトニン」 佐川恭一 「受賞第一作」 マンガ 鳥飼茜「サターンリターン」 藤本タツキ「チェンソーマン」 (話)滝本竜彦 (絵)大岩ケンヂ「NHKにようこそ!」 楠みちはる「湾岸MIDNIGHT」 映画 音…

押見修造「血の轍」の第七巻が出たので改めて解釈する

blog.stm43.com この記事は第三巻まで出ていた時期に書いたものだけども、めでたく第七巻まで来た。 血の轍 (7) (ビッグコミックス)作者:押見 修造出版社/メーカー: 小学館発売日: 2019/12/26メディア: コミック ※この表紙、一番好きかも ちょっと思ってなか…

創造性を発揮するためにはどのように日々を送るべきか(メイソン・カリー「天才たちの日課」)

何で発見したのかは忘れたが、こんな本を読んだ。 天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々作者:メイソン・カリー出版社/メーカー: フィルムアート社発売日: 2014/12/15メディア: 単行本 僕自身が最近「習慣」というものを意…

勝負の結果が出た後で負けた中年男性を救うものはあるか(ウエルベック「セロトニン」)

長いこと書評なんて書いてなかったけど、面白い小説を読んだので、書く。 ストーリーとか、作者の来歴とかは、何か他をあたってもらうとして、読んで考えたことを中心に書こうと思う。 勝負の結果が出る年齢 人生には答え合わせがある。 「カーネル・サンダ…

村上春樹の小説をワンパターン扱いする人は間違っている

目次 目次 導入 「十年に一度ずつスタイルを変えてきた」村上春樹 村上春樹のすごいところ まとめ 導入 別に僕自身は村上春樹ファンではない。 ただ一時期ネット上で村上春樹っぽい文を書くことがブームになった。 パスタ茹でて、「やれやれ」みたいな態度を…

2018年に刺さったサブカルチャー

2018年に僕が読んだ漫画とか、聞いた音楽とか。 去年は漫画たくさん読んだので、それだけで記事書いてた。 2017年、刺さったマンガの感想を真剣に書く - 四十三庵 今年はそんな漫画読まなかったかなあ…… 2016年はなぜか音楽だけで書いたらしい。 2016年ハマ…

押見修造「血の轍」の不可解なシーンを解釈する

押見修造の「血の轍」というマンガの解釈について。 現在三巻まで出ていて、雰囲気がよさそうなので読んだ。 この表紙のキレイな母子だけで怖さを感じさせるのはさすが 目次 目次 あらすじ 死んだ猫は何を意味してるのか? 静子はなぜしげちゃんを殺したのか…

電子媒体の文章が本に比べてちゃんと読まれない問題

ブログにしても、電子書籍にしてもそうなんだけども、 電子媒体の文章は、本に比べると真剣に読まれない。 読まれないし、僕自身も紙の本の方が熟読する。これは割と昔から指摘されていて、2003年には↓にて言及があった。 https://deztec.jp/x/05/07/simple/…

NirvanaのギターボーカルKurt Cobainの伝記「Heavier than Heaven」

洋書を読もうと思って、どうせなら興味ある本がよいなと思い、Kindleで購入。 今なんかキャンペーン中なのか、600円とかになっているが、僕が買ったときは1000円くらいだった気がする。 目次 目次 感想 気になったとこ 感想 僕のNirvanaへの知識は、「アルバ…

最近読んだ小説の感想

働きはじめてから、本を読んだり、漫画読んだりといった、 創作の世界に遊ぶ経験を全然しなくなった。 仕事はそれなりにしているけれど、死ぬほど忙しいというワケでもない。 けれども、やはり残業して疲れて家に帰ると、疲れていて、小説読むために頭切り替…

オウム真理教に学ぶ組織づくり(森達也「A3」)

森達也「A3」という本を読んだ、読書レポート。 僕はこの本を、単にオウム真理教のまとめ本だと思って読み始めたんだけど、 実際は単に事実を追ってるのではなくて、オウムがなぜサリン事件を起こしたのかとか、 メディアの報道姿勢とか、日本の司法とか、 …

「健全な精神は健全な肉体に宿る」は願望だった

「健全な精神は健全な肉体に宿る」という言葉は、 「体を鍛えると自然と心も健康になる!」という意味で捉えられている場合が多い。 しかし、これが元々は「健全な精神が、健全な肉体に宿っていたらなあ」という、 願望の形だったというのをどこかで誰かに聞…

世界史はたった6つの飲み物で語れる

世界史はたった6つの飲み物で語れる、と言ったら暴論だろうか? そういう試みで書かれた本をたまたま図書館で見つけたので、 読んでみたら面白かった。「世界を変えた6つの飲み物」とは、 1.ビール 2.ワイン 3.蒸留酒 4.コーヒー 5.茶 6.コーラ の6つのこ…

伝説の自己啓発本「7つの習慣」を読んで人生変わった

タイトルは釣りで、自己啓発本読んだくらいで人生変わりはしない。 けれど、いい本だったし、色々思う所もあったので、簡単に要約しておきたい。 全部要約しているわけではなくて、僕が読んでいて記憶に残ったところを書き残しているだけなのに注意していた…

リーマン・ショックを起こした金融マンたちの群像劇

2000年代、アメリカの五大投資銀行はこんなランクだった。 1.ゴールドマン・サックス 2.モルガン・スタンレー 3.メリルリンチ 4.リーマン・ブラザーズ 5.ベア・スターンズ ご存知の通り、リーマン・ブラザーズという投資銀行は倒産して、リー…

「終わった会社」だったIBMを復活させる方法(ルイス・ガースナー「巨象も踊る」)

なんか本の感想メモばっかりになって申し訳ない。経営者の書いた本というのはたくさんあるけれども、創業期のものが多くて、 一時代を築いた大企業だけれども、最近は低迷していたところを立て直した「中興の祖」が書いた本というのはあまりない。 ジャック…

猪瀬直樹「ミカドの肖像」を読んだメモ

リンクはめんどくさいので貼らない。 猪瀬直樹「ミカドの肖像」を読んだ。 簡単なメモだけを残す。 東京の巨大な空虚 東京の中心には皇居がある。 天皇は戦後、「象徴」となったが、経済や政治に与える隠然たる影響は大きい。 本書ではその例として東京海上…

ピーター・バーンスタイン「リスク」はいい経済学のまとめだった

この本、以前からほうぼうで薦められていた本で、テーマ的にも非常に興味深かったのに、なかなか積んだまま手が出なかった。 その理由は、あまりに書き方が歴史的過ぎたからだ。 「リスク」というタイトル(原題はAGAINST THE GODS)からして、リスクに対し…

小熊英二著・編「平成史」

を読んだので、メモ的に。 魅力がなくなった先進国に移民が来る理由 貧しい途上国から、発展し続ける先進国に移り住んで、頑張って働いて豊かな生活を掴むという、 アメリカンドリーム的な移民の幻想を、先進国に生まれた人間は未だに抱いている。 しかし冷…

三島由紀夫「豊饒の海」

大した冊数読んでるわけじゃないんだけど、僕が日本文学最高傑作だと推してるのがこの「豊饒の海」。 三島由紀夫がこれ書いた後に死んだっていうことが、後光効果になってるような気もしないではない。 三島由紀夫の最高傑作がどれかっていうのは、人の好み…

証券会社とはなんだったのか(「会社が何故消滅したか 山一證券役員たちの背信」を読んで考えたこと)

この本、ずっと積んだままにしてたけど、読み始めたら面白くて、一日で読んでしまった。 読売新聞が取材して書いた本だけども、証券の知識がなくてもわかりやすく解説してある。 事実関係を整理しただけなんだけども、その分読み手の方が色々考えさせられた…

失われた20年における日銀のスタンスの変遷

アベノミクスの効果を見極めるために、とりあえず岩田規久男「まずデフレをとめよ」という本を読んだ。今はもう日銀副総裁になった岩田規久男さんが編集して、執筆者にリフレ派の大物経済学者を集めた本だ。 この中の第三章で、日銀の金融政策論争をまとめら…

ITが人間の雇用を奪うのか

E・ブリンニョルソン(Brynjolfsson。なんて読むんだ)の著作。 アメリカで失業率が高止まりしている原因は、実は「IT失業」なのだ、ということを述べている本。 僕はゼミでITと経済学で論文を書いたりしてたんだけど、参考文献探すとこの分野だとBrynjolfsson…

「寝ながら学べる構造主義」内田樹

内田樹というとネット上では的外れな発言を結構してるので、評価が低いけれど、この本はよかった。僕は現代思想あんまり詳しくないので、構造主義とかレヴィ=ストロースとか名前だけは知ってたけど、 結局それが何を示しているのかよくわかっていなかったん…

「盲目の時計職人」リチャード・ドーキンス(翻訳 日高 敏隆)

「利己的な遺伝子」が図書館で借りられたまま返されないので、先にこちらから読むことにした。 ドーキンスは人気のある生物学者で、多分「利己的な遺伝子」が一番売れてるみたいで、 そのヒットの後に出した本がこの「盲目の時計職人」らしい。 生物学者であ…

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」とは

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」 とは有名な福沢諭吉「学問のすすめ」の書き出しです。 確かにいい言葉ですが、迂闊に引用するのは避けた方がいい言葉でもあります。 この言葉を引用して、 「一万円札に載ってる福沢諭吉さんは人は平等だと・…