四十三庵

蔀の雑記帳

「若者の投票率が低いから政治に若者の意見が反映されない」というSNS上のキャンペーンに危機感がある

国政選挙があるらしい。
Twitterを見ると、若者に投票を呼びかける謎の勢力が拡散している。
(選挙関係者ならわかるけど、彼らに何のメリットがあるんだ?)
たとえば下記のツイートなど。

最初はスルーしてたのだが、あまりに数が多いので、さすがに危機感を覚えた。
というのは、「若者の投票率が低いから、政治に若者の意見が反映されない」→「だから選挙に行こう!」という論理展開が当たり前に流れてくるからだ。
民主主義に関して、根本的な勘違いをしているとしか思えない。
また、現在の人口比率だと、仮に若者の投票率が100%になったとしても、高齢者の意見が通る仕組みになっている。
その辺を数字を入れつつ、説明する記事を書く。

念のため注意書きを添えておくと、別に若者の投票率が低いことが問題なのはその通りだけど、
そもそも投票率を上げたとして政治に意見が反映されることはまずないので、本気で政治を変えたいのであれば、
投票は解決方法にはならないですよ、思考停止するのやめてくださいね、というのが趣旨です。

投票は権利であって、義務ではない

まず投票は権利であって、義務ではない。
権利を保有していることと、行使することは全然別問題だ。
たとえば株を持っていても、株主総会に参加しない株主はたくさんいる。
だからといって株主の責任を果たしていないとは言われないだろう。
「選挙に行け。さもなくば政治家に不満を言う権利はない」というのは暴論だ。

投票しない国民の意見を取り入れないのであれば、18歳未満の意見は消滅する

そもそも若者投票に行こうキャンペーンは、「政治家が票数が高い世代の意見を取り入れがち」という傾向に裏付けられている。
少数派の政治的意見が抹殺される、というのは民主主義制度の欠陥であって、
「投票しない人間は文句を言うな」というのは、暗にシステムの欠陥を正当化していることにもなる。
投票しない国民の意見を取り入れないのであれば、18歳未満の政治的意見は消滅することになる。
それが正しい政治だろうか?

若者の投票率が低いのは歴史的傾向

公益財団法人明るい選挙推進協会によれば1、衆院選/参院選の年代別の投票率は下記のように推移している。

20代の投票率は、1967年(昭和42年)には衆院選で66.6%あったが、2017年(平成29年)には33.85%まで低下した。
この低下要因を分析することはこの記事のテーマではないので、おいておく。
ただ一貫して投票率が高い世代は50代、60代だ。
70代以上になると投票率が下がるのは、体悪くしたり、認知症になったりする人が出てくるからだろう。

数字自体は下がっているが、若年層の投票率が低いのは歴史的な傾向だ。
けして特別な減少ではない。
基本的には若年層は資産を保有していないので、政治から受ける影響が少ない。
だんだん年をとるにつれて、家を買ったり、家族作ったり、年金を意識したりするようになって、政治に興味を持っていくというのが普通の流れではないだろうか。

超高齢化社会の若者にとって国民投票制度は絶対に負けるゲーム

ここから少し過激な意見になる。
「若者の投票率をあげようキャンペーン」にムカつく理由は、若者の投票率が低いことを理由に世代間格差を正当化しようとしているところにあると思っている。
仮に若者の投票率が100%になったとしても、現在の人口構成だと高齢者の方が有権者が多いので、投票数で高齢者を超えられるかは怪しい。
人工ピラミッドを引用してもいいが、あれだと視覚的にしかわからないので、地道に統計資料の数字を見ることにしよう。

www.stat.go.jp 上記の2017年(平成29年)の人口推計を使う。
若者って何歳だ、高齢者って何歳だ、という議論はあると思うが、一番単純な想定で、18〜29歳 vs 60歳以上の人口を比べてみよう。

年齢層 人口数(単位: 千人)
18〜29歳 14,978
60歳以上 42,956

はい。
約1400万人の18〜29歳の有権者が100%投票したとして、
60歳以上人口は約4200万人いるので、60歳以上は33%程度投票率があれば、同じだけの投票数を稼げます。
とはいえ80〜100歳の人も入っているので、その人らほとんど寝たきりなんじゃない? という考えもあると思うので、もうちょっと細かく集計してみましょうか。 10歳刻みで集計してみましょう。

年齢層 人口数(単位: 千人)
18、19歳 2,460
20代 12,518
30代 14,996
40代 20,701
50代 15,749
60代 17,726
70代 14,486
80代 8,690
90代 1,987
100歳以上 67

まとめててちょっと意外だったけども、年代別に見ると今一番多い世代は40代だった。
第二次ベビーブームっていうらしい。
仮に年金制度廃止を謳う政治家が出馬したとして、18〜20代が投票率100%で投票したとして、
60代が投票率100%で反対票投じたら、14,978,000票 vs 17,726,000表なので、ざっくり270万票くらい60代の投票数が多くなっちゃうね。
ふと有権者全体に対して、各世代は何%いるんだろうと思ったので、それも集計すると、下記のようになった。

年齢層 人口数(単位: 千人) 全体に対する割合(%)
18、19 2,460 2.25
20代 12,518 11.44
30代 14,996 13.71
40代 20,701 18.93
50代 15,749 14.40
60代 17,726 16.21
70代 14,486 13.24
80代 8,690 7.94
90代 1,987 1.82
100歳以上 67 0.06

30代まで含めても、ざっくり25%にしかならない。
18〜30代までが投票率100%になって、その他の年代が投票率据え置きだとしても、若者の意見に全振りした政治家が当選するのは厳しそうだ。

更に現実的には、投票率は高齢になればなるほど高くなる。
つまり若者の意見はどのみち反映されない。
「若者の投票率が低いから政治に若者の意見が反映されない」というのは欺瞞的で、
若者の投票率が100 %だったとしても、高齢者の票数の方が多くなる仕組みになっている。

この状況で、投票という行為はほとんどムダなので、僕は投票にいきません。

白票を出す人について

昔「私は投票する政治家はいないが、民主主義の理念に共感しているので、投票所に行って白票を投じている」という人と会ったことがある。
それはそれで政治的ポリシーなのでいいけど、個人的にはムダじゃね? と思ってしまう。
「投票してない奴は非国民」みたいな民主主義型ファシストへのポーズにしかなっていないように見える。

まとめ

3行でまとめると……

  • 投票は権利であって、義務ではない
  • 投票率が低い世代の意見が反映されないというのは欺瞞で、今の日本の人口構成なら高齢者の意見が反映されるに決まっている
  • 若者にとって選挙は絶対に負けるゲームになっている

念のため注意書きを添えておくと、別に若者の投票率が低いことが問題なのはその通りだけど、 そもそも投票率を上げたとして政治に意見が反映されることはまずないので、本気で政治を変えたいのであれば、 投票は解決方法にはならないですよ、思考停止するのやめてくださいね、というのが趣旨です(再掲)。

参考

目で見る投票率
(了)


  1. なんだこの団体……