四十三庵

蔀の雑記帳

甲子園の異常性について改めて文章に書く

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大船渡高校・佐々木朗希投手が予選決勝で登板回避し、結果敗退したニュースが話題となった。
ニュースの詳細は、下記の記事に譲るとして、僕が常々甲子園に感じていた異常性について、書きたいと思う。
blogos.com number.bunshun.jp

まず大前提として

甲子園というのは、あくまで高校野球の全国大会だというのを皆忘れている。
高校生の部活動の試合だ。

ただ他のスポーツに比べて、注目度が高い故に、「単なる高校生の全国大会」とは言えなくなっているのも事実だ。
夏の甲子園は、日本の一大エンターテイメントになっているのは事実だ。
甲子園に出場するかしないかで、その後の人生は大きく変わる。
全国ネットでテレビ中継されて、プロ野球への道も開ける。
出場校は一気に注目度が上がる。
新興の私立高校が、野球の特待生を金の力で集めまくって、甲子園出場を目指している光景も目にするくらいだ。

しかし忘れてはならないのは、彼らはプロ野球選手でもなんでもない。
16〜18歳の高校生だ。
自分のそのぐらいの年齢の頃を思い出しても、まだ心身ともに成長途中の段階だ。
いくら野球が上手くても、まだ彼らは子供だ。

甲子園が青春ポルノ化してしまった

僕はプロ野球は好きだけれど、高校野球は好きではない。
理由は単純にプロ野球の方が野球のレベルが高いので、見ていて楽しいからだ。

ただ僕と好みが逆の人間がいる。
「高校野球は好きだけど、プロ野球は見ない」みたいな層だ。
というか結構多い。

こういう連中が何を見ているのかというと、
炎天下の中何日も連投する投手を冷房の効いた部屋から見たり、エラーして泣き崩れる選手を見て感動したりする。
球児の一生懸命なプレーを見て、感動するなどと言うけれど、要は青春ポルノなんだと思う。

甲子園の日程

そもそも甲子園の日程に無理があるのも、もっと議論されていいと思う。
野球というスポーツの性質上、ピッチャーが重要になる。
プロ野球であれば、1週間のローテーションを回すために先発投手が5〜6人いる。
しかし高校野球だと、エースクラスのピッチャーは一人で、
明らかな格下相手じゃない限り、その投手が投げることになる。
プロ野球選手でさえ、100球投げれば5日間はあけて、肩や肘を休ませる。
甲子園では、それが連投になる。
高校のチーム事情によっては、先発どころか中継ぎもいない場合があるので、これが「酷使」につながる。

選手の怪我に対する意識の低さ

僕が甲子園で酷使された投手として真っ先に思い浮かぶのが、現楽天の安楽だ。
高校2年生のとき、安楽の球数が下記だ。

初戦(2回戦)の広陵戦で延長13回、232球
3回戦の済々黌戦は159球
準々決勝の県岐阜商戦138球
準決勝の高知戦134球

高校2年生で最速157kmを記録したが、現在は最速140km、平均130km台の投手になった。
児童虐待と言われても良いレベルだが、問題になっていない。
「安楽投手、熱投!」と青春ポルノの一つの題材として消化されて終わってしまった。

「投手の意思を尊重しろ」という欺瞞

大船渡の佐々木が決勝で投げなかった際も、賛否両論が湧き上がる結果になった。
僕は投げさせない判断を下した監督を称賛したい。

まず監督には甲子園に出場しなければならないという外圧がかかっている。
チームには佐々木という化け物がいる。
化け物を全試合投げさせれば、甲子園出場はカタい。
少なくとも指揮官としては、仮に佐々木で負けたのなら、ベストメンバーで戦ったとされ、批判されることはない。
実際、佐々木をベンチに入れて敗退した監督には相当批判が集まった。

この手の議論になった際に言われる、「投手の意思を尊重しろ」という意見がある。
「投手が無理と言っているなら休ませる、行けるというなら行かせる」という意見だ。
この意見は、シンプルで一見正当性がありそうに見えるが、実はかなり欺瞞的な意見だ。
仮に投手が行きたいと言っていても、コンディションを見て、休ませるという判断をするのが正しい。

まず日本の強豪の部活動において、指導者と選手の関係は指揮官と兵隊くらいの主従関係がある。
指揮官が命令したら、「Yes」以外の答えはない。
「行けるか?」という質問は一見命令ではない。
しかし、その質問に対して、「いや肩と肘の疲労がヤバいんで休ませてください」と言えるだろうか?
それも高校生が、だ。
結果として、手術が必要になった例もたくさんある。
(トミー・ジョン手術までいっているとは知らなかったが……)

www3.nhk.or.jp

「投手の意思を尊重しろ」という論者は、集団の圧力を使って、若い選手生命を奪っている認識を持ったほうがいい。

まとめ

大船渡佐々木問題で、高校野球がもっと健全な方向に改善されることを望む。
最近野球以外でも、日本という国の変化に対する弱さを感じることが多くなった。
何か大きな外圧がないと、誰もがおかしいと思っていることを変えられない社会というのは、どうなんだろうか。
(了)