四十三庵

蔀の雑記帳

アメリカという国はいかにしてアメリカになったか(「若い読者のためのアメリカ史」)

世界史は履修したが、アメリカの歴史はなんとなくしか知らない気がしたので、下記を読んだ。


「たった500年の話をする」という表現が文中で出てくるが、
アメリカ合衆国としての成立は1787年なので、僕が思う狭義のアメリカという国の歴史はもっと短い。
今が2020年(記事執筆時点)なので、233年しか歴史がない、ということになる。

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たかだか200年ほどの歴史しかない国が、中国4000年の歴史などと言われる中国や、
ヨーロッパ諸国、そして日本を追い抜いて、経済力・軍事力で世界一位の座にいて、
世界の覇権(ヘゲモニー)を握っているというのは驚くべきことだ。

まあでも日本もよく考えてみたら明治政府の成立が1868年くらいで、
今の日本という国のルーツってそこなので、日本の歴史だってそれなりに短い。

以前Twitterで「日本だけ、ずっと日本。 この事の凄さを、学校では教えないんですよね・・・。」というツイートが話題になったが、
何をどう考えても江戸幕府と明治政府の間は断絶しており、それを連続性のある日本ととらえるのは無理があるように思う。
別にいいけども。
その辺りは究極、捉え方次第だろう。

前置きが長くなったが、とにかくアメリカの歴史について。
最初ざっくり年表を書いて、その後で細かい話を書いていく。

目次

アメリカ史ざっくりまとめ

覚えやすいように、100年区切りにする。
各100年を3行でまとめる。

〜1500年

  • インディアン(ネイティブアメリカン)の時代
  • ヨーロッパやアジアとは違う独自文明があった
  • インカ帝国、アステカ帝国などが繁栄

1500年

  • 1492年 コロンブスがアメリカ大陸発見
  • コンキスタンドールによる侵略と天然痘の大流行
  • 列強による植民地化

1600年

  • ピルグリムファーザーズの移住
  • タバコ、砂糖、コーヒー、綿花のプランテーションで栄える
  • 一方で労働力としての奴隷の需要が高まる

1700年

  • 1754年に七年戦争でアメリカ植民地でも列強による戦争に→イギリスが勝利し、スペイン・フランスから領土を奪う
  • 1775年、イギリス政府は戦争の負債のため、アメリカに重税を化したため、アメリカ独立戦争が起こる
  • 1787年、アメリカ合衆国が誕生(ただし北東部13州のみの連合体)

1800年

  • 1846年、米墨戦争(墨はメキシコ)→アメリカが勝利し、南東部を統合
  • 1861年、南北戦争→4年続き、国内が疲弊する
  • 都市の誕生

1900年

  • 二度の世界大戦(1914-1918 WWⅠ/1939-1949 WWⅡ)
  • 大恐慌
  • 冷戦(資本主義vs共産主義)

2000年

To Be Continued...

アメリカは昔から公平だったか?

昔からアメリカが公平な文化だったわけではない。
昔には身分制度があった。
奴隷制度は有名だが、もっと儒教道徳っぽい文化が1700年頃はあったらしい。
当時の礼儀作法の本が引用されているが、下記のような文言があったらしい。

高貴な方に話しかけるときは、身を乗り出すようなことがあってはならないし、
顔をじっと見てもいけないし、あまり近づきすぎてもならず、十分に距離を取って歩くこと。
自分よりも身分の高い人たちとご一緒することがあれば、尋ねられるまで口を開くことなく、
発言を許された時点で、背筋を伸ばし、帽子を取り、手短に答えること。

アメリカのフラットさの起源

ヨーロッパのような貴族こそいなかったが、「人は皆平等に創られている」という文化ではなかった。

その文化が変わったのは独立戦争からだろう。
ワシントンが率いた軍の描写が面白い。

上は六十歳から、下は十四歳、黒人奴隷もたくさんいた寄せ集めの軍隊

規律正しい上下関係というのは、1700年以前の世界で強さを生み出す要素だった。
アメリカ合衆国をつくった人間は、もっと混沌としていた。

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「E pluribus unum」というラテン語がアメリカという国の標語となった。
意味は「多数から成るひとつ」だ。
公平、個性、自由。
そんなアメリカらしさを象徴するワードが、合衆国誕生の際に明文化された。
(United States of Americaという国名も、元々は独立していた州がアメリカという旗のもとに団結した、という意味が込められている)

われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。
すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているということ。
(「独立宣言」1776年7月4日第2回大陸会議により採択13のアメリカ連合諸邦による全会一致の宣言)[アメリカンセンターJAPAN訳]

アメリカはいつアメリカになったか

ワシントンが初代大統領だった頃に、アメリカの起源があるのは間違えないが、
当時は北米大陸の中の東側半分の領土しかなかったし、大した産業もなかった。

現代にまで通ずるアメリカンスピリットが形成されたのが、多分南北戦争が終わった後の1800年代後半。

  • 自動車のフォード
  • 石油業のロックフェラー
  • 鉄道業のジェイ・グールド
  • 金融業のJ・P・モルガン
  • 鉄鋼業のアンドリュー・カーネギー

など、各産業でスター実業家が誕生した。
西部劇の舞台もだいたいこの時代だ。

この時代のニューヨークの街の描写なんかは、今のインドの都市部みたいだ。

黒人と女性という二大テーマ

本書はいくつかのテーマがあるが、その中でも大きなテーマが黒人と女性の権利だろう。
「アメリカはどのように平等の概念を進歩させてきたか」と言い換えてもいい。

独立宣言には、「すべての人間は生まれながらにして平等」と書かれていたが、ここでいう人間には実際のところ「白人男性」が想定されていた。
インディアン、黒人奴隷、アメリカ人女性は含まれていなかった。

女性の権利については、日本もさほど状況が変わらず、
アメリカよりちょっと遅れてるくらいなので、だいたい想像はできると思う。
特筆すべきことはない。
黒人差別については、アメリカ特有の根深さがある。

リンカーンの奴隷解放宣言の後も、黒人と白人の間の区別は残った。
1950〜1960年頃、公民権運動が起こって、ようやく黒人の権利が保証されるようになった。
しかしその過程はけして平和なものではなく、脅迫、リンチ、暗殺など、たくさんの血が流れた。

ハリウッド映画では必ず白人俳優と黒人俳優をセットで出すようになっていて、
過剰じゃないかと思うとともに、アジア人も同じくらい扱えやと思っていたのだけども、
奴隷制から連綿と続くアメリカにおける黒人の権利獲得の長い過程を知ると、その過剰さも仕方ないかと思った。

本としての特徴

「若い読者のためのアメリカ史」という本自体についてなんだけども、
歴史的事実に基づきながらも、物語的に各トピックをつなげていて、書き方としては歴史小説に限りなく近いなと思った。
「若い読者のための〜」シリーズは、これと宗教史・経済学史なども出ているが、評判はいいっぽい。
宗教史・経済学史は大学でかなりやったので、読むつもりはない。

変な国としてのアメリカ

アメリカのすごさを感じることも多々あるが、変な国だなと思うこともある。
思いつく限りで列挙してみる。

  • 未だに女性の中絶反対派が一定数勢力を持っていること
    • これに関しては共和党内の強固なプロテスタント勢力から来るものらしい
  • 世界一豊かなのに先進国で一番貧困層が多い
  • ヤード・ポンド法をなぜか使い続けている
    • これはマジで迷惑だからやめてほしい
  • ファッションがダサい
  • 銃規制が全然進まない
  • 薬物規制が全然進まない
  • 肥満が多い
    • 豊かな国なのに平均寿命が短い
  • 私立大学の学費が高すぎる

アメリカは平等で能力主義か?

経済学やITビジネス、あるいは野球という分野だと、アメリカの存在感というのはものすごくて、
本気でその分野で成功したいなら、アメリカに人生のどこかでいくしかないと思っている。
ただ全く実現する気配はない。

平等と競争というのは非常にバランスが難しくて、
「誰もが生まれ持った能力を最大限発揮して、それに見合う報酬を社会から与えられる」という世界は理想で、
かつて王様や貴族が存在した時代に比べたら、現代はその世界に近づきつつある。
けれど新たな権力構造ができて、理想の世界から離れていっているように思う。

フェアな競争というのは言葉の響きよりも厳しい。
自分が負ける可能性がある状態は不安で、夜も眠れなくなってしまう。
できれば成功者はずっと成功し続けたい。
「過去の栄光にしがみつく」とか「老害」とか言われてもいいから、いいポディションにい続けたい。
アメリカの成功者は、その有り余る富で子供をエリート校に入れる。
エリート校に入った子供は、必然的にエリートコースに乗る。

一方で貧困から這い上がって、成り上がる子供もいる。
たとえばイーロン・マスク、たとえばエミネム。
(イーロン・マスクは貧困、というほどのものでもないかもしれないが)
学費がなければ奨学金制度があるから、頭さえよければ州立大学くらいには行ける。
一見ルールは公平なように見える。

けどどうなんだろうか。
生まれた瞬間にほとんどのことは決まってしまっているように僕には見える。
今僕が生きている時代を、未来の人間がどういう風に歴史的文脈でとらえるかはわからないし、考えても仕方がないことだ。
ただ今のアメリカ、そして日本も、個人的には平等からは程遠い状態だと感じる。

なんというか、一見誰でも努力すれば勝てるように見せているが、現実は親の資産のゲタを履いた連中が圧倒的に有利で、
それが世代を超えて繰り返されて、強化されていくだけに見える。
別に社会的にはそれでいいじゃないか、という意見もあると思うが、個人的には希望のない社会だなと思う。

ゲームで絶対に自分が勝てない状況だと気づいたとき、プレイヤーがゲームから降りるだろう。
そしてゲームを運営している連中を襲うかもしれない。
そうなると自由競争というゲームのルールは変えざるを得ない。

アファーマティブアクションという名前で、女性優遇や黒人優遇の制度設計がされている。
それで一見ゲームのルールは是正されているようにも見えるが、この手の制度設計が更に不平等を加速させているような気がする。
アファーマティブアクションが悪いという話ではない。

完全な平等は存在しない。
しかし歴史の積み重ねの中で、人類は平等の概念を進化させていった。
今後アメリカや世界がどうなるかは予想もつかない。
けれど一つだけ確かなのは、今我々が思っている平等な状態が、将来も平等とは限らない、ということだろうか。
かつて独立宣言時のアメリカで、「すべての人間は平等だが、奴隷と女性と先住民は白人男性と待遇が異なる」という状況が存在したように。
(了)